3回眼科臨床機器研究会


日時:20021130日(土)  15:0018:00

会場:氷川丸 ブルーライトホール(横浜市 山下公園)

 

日眼専門医事業認定番号:12745

 

会長 清水 公也(北里大)

オーガナイザー 庄司 信行(北里大)

プログラム


1)ウェイブフロントアナライザー:KR-9000PW

                                                    座長/鈴木 雅信(北里大)

KR- 9000PWの原理と基礎       三橋 俊文(株式会社トプコン)

KR-9000PWの測定方法について                 堀部 円(北里大)

KR-9000PWの臨床応用                                        黒田 輝仁(大阪大)


2)OCTスキャナー:OCT3              座長/高野 雅彦(北里大)

OCTの基礎と臨床                            高橋 寛二(関西医科大)

・網脈絡膜病変のOCT                               飯田 知弘(群馬大)

OCT3概要と操作                      東江 美津子(カールツァイス株式会社)


3)視神経乳頭解析装置:HRT II     座長/庄司 信行(北里大)

HRT IIの原理と応用      

                              小牧 孝治(ジャパンフォーカス株式会社)

HRT IIの臨床使用経験                         吉川 啓司(吉川眼科クリニック)

HRTHRT II-その違いは?そしてどう使いこなすのか-

                                                                            富田 剛司(東京大)


1)ウェイブフロントアナライザー:KR-9000PW

座長:鈴木 雅信(北里大)

眼球光学系の全収差の測定により、球面成分、円柱成分で表されない高次収差を測定することが可能となった。収差データとリンクさせることで、次世代の屈折矯正手術であるWavefront-guided refractive surgeryが可能となり、我々の施設における試行でも良好な結果を得ている。KR-9000PWは単なる全収差の測定機能のみならず、種々の解析機能を備えている。高次収差の原因部位の特定や明所/暗所のシミュレーションも可能となっており、眼科一般診療においても有益な機器であり、今後の普及が期待される。
今回は収差の理論から、実際の測定法、データ解析までを3人の演者の方に解説していただく。


◆  KR-9000PWの原理と基礎

講演者:三橋 俊文(株式会社トプコン)


KR9000PWは、波面 収差を眼科の日常臨床で測定可能にする目的で開発された装置である。Hartmann-Shack波面センサーの原理を利用して、従来は行えなかった眼球光学系全体から発生する人眼の波面収差(眼球波面収差)測定をクリニックで簡便に実現することができる。また、オートレフラクトメーター機能やケラトメー ターの機能も完全に含んでおり、角膜形状もプラチドリングによって波面収差と同時に測定可能である。さらに角膜形状から角膜前面により発生する波面収差(角膜波面収差)を解析することができ、眼球波面収差と直接比較することが可能である。この機能により、屈折矯正手術を含む角膜形状の変形による波面収差と、白内障や眼内レンズなどによる眼球内部の光学系による波面収差をKR9000PWの測定により区別することが可能である。また、コンタクトレンズ装用時のコンタクトレンズ前面から発生する波面収差およびそのときの眼球波面収差も測定可能であり、装用時の見えに問題がある場合、その原因の究明にKR9000PWが効果的であると言える。


KR-9000PWの測定方法

講演者:堀部 円(北里大)

 

当院では平成146月よりウェイブフロントセンサー:KR-9000PWを使用し、波面収差等の測定を行っている。このウェイブフロントセンサー:KR-9000PWは、眼球光学系全体の波面収差と角膜のみの波面収差を測定することが出来る。この他に瞳孔径が測定でき、瞳孔径4mmを昼間視、6mmを夜間視とした屈折値を算出することが可能である。そのため夜間の見づらさを訴える症例において、夜間と昼間の屈折値にどれくらいの差が生じているかを定量評価でき、実際の眼鏡処方時に参考となる。また、この機器の特徴の一つに裸眼での測定ばかりではなく、眼鏡装用下での屈折値測定が可能という事が挙げられる。そのため眼鏡が合わなくなったと訴える症例においてこの測定を行う事で、どの程度現在の屈折値と異なるかを把握することが出来る。このように多様な機能と共に測定方法を説明する。


◆  KR-9000PWの臨床応用

講演者:黒田 輝仁(大阪大)

 

加齢ともに矯正が困難になる原因として角膜および水晶体の不正乱視があります。従来のオートレフラクトメーターでは眼球光学系の球面成分、円柱面成分は測定可能でしたが、角膜の不正乱視や、水晶体の加齢性変化による白内障による局所的な屈折力の変化は測定不可能でした。しかし最近我々は独自にこの波面センサーを応用した機器を開発し、多様な眼球の光学的特性を測定することができるようになりました。波面センサーを用いれば従来の機器では測定が不可能であった水晶体を含めた眼球光学系全体での不正乱視を高次波面収差として定量化することができます。今回は水晶体など眼球光学系の加齢による変化を主として述べさせていただきます。


2OCTスキャナー:OCT3

座長/高野 雅彦(北里大)

光干渉断層計(optical coherence tomography: OCT)は、近赤外光(850nm)の干渉現象を利用して、生体の微細な断層像を得る非侵襲的な検査装置である。眼科領域においては、黄斑円孔や網膜上膜などの網膜硝子体界面疾患、網膜の微細な浮腫、さらに色素上皮や脈絡膜などの網膜下疾患の断層像を得ることで、その病態の解明、診断や治療効果の判定に広く用いられるようになってきた。

今回、モデル動物を用いたOCTの基礎的研究からその臨床応用、網膜外層から脈絡膜病変のOCT像について、それぞれ専門家に講演をお願いした。さらに、本年9月に発売されたばかりで、解像度を約5倍に上げた新型断層計「OCT3」の概要と操作について、従来機種との相違点を踏まえ詳細に解説していただくようお願いした。本講演を通じて眼科臨床におけるOCTの重要性についてもう一度掘り下げてみたい。


OCTの基礎と臨床

講演者:高橋 寛二(関西医科大)

 

光干渉断層計(OCT)は 眼底病変における網脈絡膜の断層像を得る装置であり、その画像は光学的切片とも呼ばれている。しかし、OCTによる断層像が実際に眼底の組織変化をどの程度忠実に反映するのかは、欧米で過去に一部研究が行われたのみである。演者らはここ数年、OCTを用いて動物眼(サル眼、ラット眼)を用いた基礎実験を行い、光学的切片と組織切片の比較によって、OCT画像の精度を検証し、それを臨床に還元してきた。網膜下の病変として脈絡膜新生血管モデル、網膜内層の病 変として網膜虚血モデル、網膜外層の病変として網膜変性モデルをそれぞれ用いて、OCT画像と組織所見の比較を行ったところ、OCT画像は網膜色素上皮と脈絡膜新生血管の位置関係をよくあらわし、また網膜内層あるいは外層の障害による感覚網膜の変化を定性的、定量的にあらわすことがわかった。

本講演では、以上のような基礎実験の結果をお示しするとともに、この結果が臨床例のOCT画像 読影にどのように反映されているかを述べたい。


網脈絡膜病変のOCT

講演者:飯田 知弘(群馬大)

 

光干渉断層計OCTは、検眼鏡所見に対応した組織像の観察を可能とした。OCTにより、網膜硝子体界面病変や各種疾患での感覚網膜の変化、さらには網膜下病変の断面像を知ることができ、これらの病態の解釈、診断、治療方針の決定や効果判定に有用な情報を与えてくれる。

本講演では、黄斑部の網脈絡膜疾患を中心として、1)OCTで網膜下の病変はどう観察できるのか、2)そこから感覚網膜にはどのような変化が生じて、視機能変化とどのように関係しているのか、について論じていきたい。具体的には、(1)加齢黄斑変性、特発性脈絡膜新生血管などで生じる脈絡膜新生血管はどのように観察できるのか?(2)網膜色素上皮と脈絡膜新生血管の位置関係は病態理解と治療に重要であるが、これはOCTでわかるのか?(3)網膜色素上皮剥離はどのように観察されるのか?(4)中心性漿液性網脈絡膜症では黄斑部網膜が剥離しているのに、なぜ視力がよいのか?などについて、OCT所見から考えていきたい。


OCT3概要と操作

講演者:東江 美津子(カールツァイス株式会社)

 

OCT1996年に製品 化され、日本においては19974月から販売が開始された。以後、モデルはテーブル一体型のOCT2、そして今年9月からOCT3と変貌を遂げてきた。実際、OCT3は名称および概観的には3世代目となるが、コンピュータのみならず干渉計や光学系等のハード面、操作面が一新されたことから実質的には2世代目である。OCT3の最大の特徴は横断面・軸面ともに解像度が10ミクロン以下に高まったこと、測定ビーム本数が最大512本に増加、測定時間の短縮化やラジアルラインなど複数スキャンの同時取得、軸方向におけるアライメントの自動化、そして無散瞳下でのスキャンが可能となった。OCT12との性能・機能面の比較を行いながらOCT3で改善・追加された機能、操作、そして各疾患に適用可能なスキャンパターン・解析プロトコルについて具体的に解説する。


3)視神経乳頭解析装置:HRT II


座長/庄司 信行(北里大)

視神経乳頭形状解析装置「HRT」は、大学病院をはじめとする比較的規模の大きい医療施設で用いられることが多く、臨床研究用の特殊な器械、というイメージが強かった。しかし近年、その解析対象を緑内障に絞り、より小型化した「HRT II」が市販され、一般の開業医の先生方の間にも普及しつつある。なによりこの装置に期待されるのは、緑内障のスクリーニングであり、第一線の先生方にとって、緑内障診断やより早期緑内障の検出に威力を発揮するか否かが非常に興味のあるところである。本セッションでは、従来機種との比較や使用経験などの御講演を通して、果たして「HRT II」が緑内障診療の大きな戦力となり得るのかどうかについて考えてみたい。


HRT IIの原理と応用

講演者:小牧 孝治(ジャパンフォーカス株式会社)

 

ハイデルベルグエンジニア リング社(ドイツ)のHeidelberg Retina Tomograph II(以下HRT II)は、既に発売されているHRTの機能を限定し、日常の診断に使用されることを考慮し可能な限り自動化されている。操作も簡単で、そして非常にコンパ クトに設計された共焦点レーザ走査型顕微鏡である。眼底のトポグラフィの量的評価とトポグラフィ変化の正確なフォローアップを目的としている。
HRT II
HRTの後継機種というのではなく、大まかにはHRTが研究用、HRT IIは臨床、外来用と位置づけられている。ここではHRT IIの共焦点レーザ走査の原理、レーザ走査トモグラフィ、技術的な特徴、そして視神経乳頭形状解析を中心とした眼底への応用について述べる。


HRT IIの臨床使用経験

講演者:吉川 啓司(吉川眼科クリニック)


1991年の日本緑内障研 究会による緑内障疫学調査の結果、正常眼圧緑内障(NTG)が再発見されて以来、わが国の緑内障の中ではNTGが最も多いことが確認されてきた。NTGでは「眼圧」が正常範囲にあるため、「乳頭所見」や「視野障害の有無」が診断上、重視される。特に、その早期診断には「乳頭所見」がキーファクターとなる。一方、乳頭所見はグレイゾーンが多く、日常外来では診断にあたり困難を感じることも少なくない。そこで、乳頭の客観的評価を目的として開発された乳頭解析機器を日常診療に応用するための努力が続けられてきた。
Heidelberg retina tomograph (HRT)
は乳頭解析器の代表機種であるが、特に、その最新版であるHRT?ではハードウェアの進歩もあり、「日常外来における緑内障乳頭診断」に必要と思われる「スピード」にも十分対応できるようになった。そこで、現場の眼科医としてのHRT IIの位置づけや実際の応用についての経験を述べたい。


HRTHRT II -その違いは?そしてどう使いこなすのか-

講演者:富田 剛司(東京大)

 

 HRT IIHRTの単なる廉価版ではない。しかしながら、今のところHRTにとって替わるものではなく、それぞれの装置の特長を生かした使い方が可能であると考える。2つの装置の最も大きな違いは、その大きさと動作するプログラムである。HRT IIは持ち運びが可能なオプティカルヘッド部を有しており、狭いスペースでも設置可能である。また、HRTDOSプログラムで作動するのに対し、HRT IIはウインドウズで作動するため、汎用性が高くなっている。しかしながら、HRTは長年使用されてきたプログラムとしての実績があり、またHRTIIに比し、より詳細な乳頭解析が可能である。本セッションでは、HRTHRT IIの解析プログラムの違いと、演者なりに考えるそれぞれの結果の解釈の仕方を述べる。

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第3回眼科臨床機器研究会(2002年11月30 日)

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