2回眼科臨床機器研究会

 

日時:20011124日(土)  15:0018:00

会場:パシフィコ横浜会議センター

 

日眼専門医事業認定番号:12745

 

会長 清水 公也(北里大)

オーガナイザー 庄司 信行(北里大)

プログラム


1)新しい眼軸長測定装置・IOL Master     

                                                座長/魚里 博(北里大 眼科)

IOL Master?臨床的経験                         藤澤 邦俊(北里大)

IOL Masterの使用方法とその注意点                    神垣 久美子(北里大)

IOL Masterの測定原理とその特徴                      魚里 博(北里大 眼科)


2)赤外線電子瞳孔計・イリスコーダ      

                                                 座長/石川 均(北里大 眼科)

・電子瞳孔計 イリスコーダの原理と歴史

                                               袴田 直俊(浜松ホトニクス 医療機器部)

・イリスコーダの検査の実際                         鈴木 武敏(鈴木眼科吉小路)

・イリスコーダの発展:瞳孔視野計            吉富 健志(和歌山県医大 眼科)


3)眼底血流計・CLBF              座長/岡本 直之(北里大 眼科)

Canon CLBF model 100,その原理と使い方

                         田中 信也(キヤノン株式会社 医療機器開発部)

・眼血流測定装置の比較検討                                 永原 幸(東京大 眼科)

Laser Doppler Velocimetryの臨床への応用

                                              吉田 晃敏、長岡 泰司(旭川医大 眼科)


1)新しい眼軸長測定装置・IOL Master


座長/魚里 博(北里大 眼科)


IOL Masterによる眼屈折要素の測定

 光干渉による眼軸長測定が可能なIOL Masterは非接触でしかも短時間に測定できる特徴を有する。それ以外に角膜曲率や前房深度も光学的に同時測定出来るため、従来複数の機器が必要であった屈折要素の測定が臨床的に簡便に評価できるようになった。

そのため、単に超音波眼軸長測定装置に代わる機器としてではなく、眼屈折系の主要な光学要素を1台で測定できることは、白内障手術における眼内レンズ度数予測だけではなく、最近の屈折矯正手術や種々の眼科手術への応用や、小児や乳幼児の発育に伴う屈折要素の評価などその応用分野はきわめて広いと思われる。

本セッションでは、本装置の眼科臨床応用を嶺井が、また実際の眼科検査における特徴や留意点を神垣が、本装置の原理や特徴については魚里が解説する。

無論、これのみで緑内障を診断することは不可能であるが、今後の検討によっては視野検査と同等あるいはそれ以上に日常診療に欠かせない機器になる可能性もある。

本研究では、当装置のエキスパートを3名お呼びし、使い方や注意点といった基礎的なことから、これまでの研究結果や今後の可能性などについてもご講演いただき、当装置の有用性や限界なども議論していきたい。


IOL Master 臨床的経験

講演者:藤澤 邦俊(北里大)


当院では,平成132月より非接触型レーザー干渉に基づく光学式眼軸長測定装置(IOL Master, Zeiss)を導入した。今回、有水晶体眼、偽水晶体眼、無水晶体眼の眼軸長をそれぞれ超音波Aモード(US=800 Nidek)および非接触型レーザー干渉に基づく光学式眼軸長測定装置(IOL Master)を用いて測定し、臨床的精度を比較検討したので、光学式眼軸長測定装置の試用経験を含め報告する。


IOL Masterの使用方法とその注意点

講演者:神垣 久美子(北里大)

 

IOL Masterは新しい非接触型眼軸長測定装置であり、他に角膜曲率半径・前房深度が測定でき主に眼内レンズの決定に用いられる装置である。当院ではこの機器の導入により従来超音波Aモードで約14分かかっていた検査時間を、1分に短縮することが可能となった。ここでは実際の使用方法を中心に注意点を加えながら説明する。


IOL Masterの測定原理とその特徴

講演者:魚里 博(北里大 眼科)

 

 眼軸長の臨床計測には超音波A- modeUltrasound Biometry)が用いられているが、新しく光波干渉による光学式眼軸長計測も利用できるようになってきた。IOL Masterは眼軸長以外にも前房深度や角膜曲率を光学的に計測できる新しい装置である。

 本講演では、光波干渉に基づく新方式の眼軸長測定の原理や測定精度を解説するとともに、従来の超音波方式との相違やそれぞれの特徴についても臨床結果をふまえながら解説するとともに、眼科臨床への各種の応用についても言及する。


2)赤外線電子瞳孔計・イリスコーダ


座長/石川 均(北里大 眼科)


赤外線電子瞳孔計・イリスコーダ

瞳孔はわれわれに非常に重要な情報を与えてくれるが、その定量は困難であった。しかし両眼同時測定赤外線電子瞳孔計(イリスコーダ)により、対光反応、両眼交互刺激による Marcus Gunn瞳孔の定量をも可能となり、更に近年調節時の瞳孔反応、瞳孔反応を用いた視野検査までが可能となった。

今回、イリスコーダの基礎的な概要から最新の臨床応用までを三人の演者の方に解説していただく。


電子瞳孔計 イリスコーダの原理と歴史

講演者:袴田 直俊(浜松ホトニクス 医療機器部)

 

瞳孔の対光反応を詳細に解析する目的で、1970年代に電子瞳孔計「イリスコーダ」が開発された。イリスコーダは赤外線照明により得られた瞳孔画像を赤外線テレビカメラで観察することにより暗所で散瞳状態の瞳孔の観察を可能にした。さらに一定光量の光刺激(可視光)を照射した時の対光反応をテレビ計測技術を応用し、対光反応をパラメーターとして表示した。当初イリスコーダーは視神経障害等の検査に使用されてきた。

その後、両眼同時検査を可能とする「双眼イリスコーダ」が開発され、「瞳孔反応左右差」や「直接反応と間接反応の差」などの研究も行われ、また、操作性を向上させた「ポータブル型のイリスコーダ」の開発を経て現在は「瞳孔反応連続測定機能」を有したイリスコーダが、臨床検査及び自律神経機能研究を目的として使用されている。今回はイリスコーダの歴史と原理を紹介し、さらに瞳孔機能検査を行う場合の測定条件について考察を加えて報告致します。


◆ イリスコーダの検査の実際

講演者:鈴木 武敏(鈴木眼科吉小路)

 

不適切な度数の眼鏡、コンタクトレンズを装用している人は、多くの眼科医が思っている以上に多いのではなかろうか。不適切な屈折矯正は、調節異常を引き起こし、眼精疲労のみならず、頭痛や肩こりの原因になっている。

これまでは調節異常に伴う瞳孔の動態の研究は、一部の研究者の対象と見られ、一般臨床の場ではほとんど行われていない。しかし、両眼開放の同時測定赤外線瞳孔計が開発され、定屈折近点計と併用することによって、調節による瞳孔反応を容易に記録することが可能になった。不適切眼鏡装用者の瞳孔反応記録などを提示しながら、これからの屈折矯正は調節機能をいかに快適にしてあげるかが大切であることを、臨床家の目から述べてみたい。


イリスコーダの発展:瞳孔視野計

講演者:吉富 健志(和歌山県医大 眼科)

 

 自動瞳孔視野計は市販の自動視野計に赤外線電子瞳孔計(イリスコーダ)を組み込んだものである。この視野計の原理は、視標の呈示によって起こる瞳孔反応を記録することによって視野上の一定の場所における網膜の感度を対光反応の大きさから測定するものである。瞳孔視野計による検査はまだ一般的とは言い難く、神経眼科領域における測定の意義もまだ未解決の部分が多いが、今回この瞳孔視野計を用いた症例を呈示し、その有効性について考察したい。


3)眼底血流計・CLBF


座長/岡本 直之(北里大 眼科)

種々の眼底疾患、特に網膜血管閉塞症や糖尿病網膜症などでは網膜循環動態の異常が関与している。従来、蛍光眼底造影などの網膜循環動態の定性的な検査は、その病期や治療方針の決定に大きく役立ってきたが、定量的な解析を可能にする新たな理論と方法が長い間の夢であった。その夢を実験室レベルから臨床現場のルーチン検査へと現実にしてくれそうな機器が登場した。CLBFである。本研究会ではこの分野の先端を走っておられる3人の演者の方をお招きした。


Canon CLBF model 100、その原理と使い方

講演者:田中 信也(キヤノン株式会社 医療機器開発部)

 

CLBF model 100は、ターゲットとなる眼底の血管に測定用Laserを照射し、その散乱光に含まれるドップラ信号を検出することによって、その血管の血管径、その中 を流れる血流の速度、そして両者から計算される血流量を計測するあたらしい眼科計測機器である。

本装置の特徴として、1)流速の実速度表示(mm/sec)2)2秒間の継続的流速測定、3)血管径の同時計測による血流の自動量算出、の3つがあげられるが、測定原理であるLaser Doppler Velocimery(以下LDVと略す)は非常にセンシティブな検出法であり、その利用に際して、十分な理解と注意が必要となる。

そこで、本研究会では、我々が開発の経過で得られたデータをもとに、LDVの測定原理および血管オートトラッキング技術を紹介するとともに、本装置の使い方のコツについて報告する。今回の報告が、先生方のLDV装置に対するご理解の一助となれば幸いである。


眼血流測定装置の比較検討

講演者:永原 幸(東京大 眼科)

 

近年、超音波やレーザー技術を応用した眼血流解析装置の進歩で、いくつかの異なる眼血管系における血流動態の変化を客観的に測定することが可能になった。ヒトにおける眼循環動態の変化を捕らえるには、眼組織に流入する血流を非侵襲的に高い再現性で定量化する必要がある。現在、ヒト眼血流動態の変化を非侵襲的に捕らえる臨床応用可能な方法としては、網膜中心動脈、網膜中心静脈や短後毛様動脈など後眼部の眼外血管の血流が測定可能な超音波カラードプラ法、そして後眼部の眼内局所血流が測定できるレーザードプラ法(velocimetryflowmetry)、scanning laser Doppler flowmetry、レーザースペックル法がある。これらの方法を応用した装置ではそれぞれの測定原理が異なり、装置によっては定量的指標となる値が限られた範囲でしか血流と相関していない。本研究会ではこれらの装置の測定特性について述べ、その臨床的意義について検討する。


Laser Doppler Velocimetry の臨床への応用

講演者:吉田 晃敏、長岡 泰司(旭川医大 眼科)

 

1970年代にドップラ速度計測を網膜血管へ適用したRivaらの研究に端を発するLaser Doppler Velocimetry(以下LDV)は、網膜上の一本一本の血管を流れる血流量を定量的に計測する有効な方法である。しかし、元来が鋭 敏な検出法であることに加え、固視微動の影響などの問題があり、日常の臨床の場で使用できる装置は開発されなかった。

近年、我々の研究の成果を踏まえたLDVによる血流計測機が市販され、その応用が進みつつある。本研究会では、その装置の再現性、限界を示すとともに、最近の臨床例を紹介する。

LDVは、例えばオートレフのように日常の診療に手軽に利用できるほど、成熟した装置とはいえない。しかし、原理・装置の特徴を十分に理解して使用すれば、網膜血流量の絶対値が得られるので極めて有用な検査機器となる。これをうまく利用してゆくことにより、種々の眼疾患に対する病態解明や診断・治療の指針が得られる可能性があると考える。

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第2回眼科臨床機器研究会(2001年11月24 日)

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