第22回眼科臨床機器研究会


日時:202311月11日(土)  15:3518:30

会場:横浜シンポジア

 

ジョイント開催:The 26th IRSJ2023

日眼専門医事業認定番号:12745

 

主催 眼科臨床機器研究会

会長 庄司 信行(北里大)

事務局長 飯田 嘉彦(北里大)



プログラム


1)瞳孔計;ヒトミル                          モデレーター/龍井 苑子(北里大)

瞳孔と瞳孔計の歴史                                 前田 史篤(新潟医療福祉大)

従来の瞳孔計とヒトミル                           石川 均(北里大・医療衛生)

ヒトミルを用いたRAPDの他覚的検出                         中村 誠(神戸大)

 

2)近年の眼圧測定                              モデレーター/笠原 正行(北里大)

・アイケアic200手持眼圧計の使用経験                徳田 直人(聖マリ医大)

・アイケアホーム2の使用経験                                  齋藤 雄太(昭和大)

トリガーフィッシュの使用経験                           中元 兼二(日本医大)


1)瞳孔計;ヒトミル

  

                                    デレーター/龍井 苑子(北里大)

 瞳孔は最も簡便に他覚的な視機能評価を可能にする生体構造物である。半暗室でペンライトを1本用意すれば、短時間かつ肉眼で検査が可能となる。しかし一方で、従来の瞳孔検査は検者の経験によるところが大きく、定量性にいささか欠けるものであった。また、瞳孔は自律神経による二重神経支配を受けており、更に年齢や飲食物、内服薬、職業などに影響を受ける。これらの特性によって、瞳孔反応の評価が困難になる場合もあり、日々の臨床で悩まされた経験を持つ先生も少なくないのではないだろうか。

 近年は、赤外線電子瞳孔計など定量的かつ経時的に瞳孔反応を測定できる機器が開発され、瞳孔反応を詳細に計測できる時代に変化しつつある。まずは新潟医療福祉大学の前田史篤先生に瞳孔と瞳孔径の歴史を解説して頂く。また今年の眼科臨床機器研究会では、最も新しい瞳孔計測計、Hitomiru-NO をとりあげ、北里大学 石川均先生と神戸大学 中村誠先生に詳しく解説して頂く。


瞳孔と瞳孔計の歴史

講演者:前田 史篤(新潟医療福祉大)


19993月 川崎医福大感覚矯正学科 卒業

20013月 川崎医福大大学院感覚矯正学専攻修了,

修士(感覚矯正学)

20014月 川崎医福大感覚矯正学科

助手川崎医大病院眼科 視能訓練士

20073月 川崎医福大大学院感覚矯正学専攻修了,

博士(感覚矯正学)

20074月 川崎医福大感覚矯正学科 講師川崎医大病院眼科 視能訓練士

201210 Tübingen 大学眼科 客員研究員

20144月 新潟医福大視機能科学科 教授

20184月 同学科長

 瞳孔は虹彩の筋肉が形成している孔(空間)であり、瞳孔そのものは組織ではない。しかし、「目は口ほどに物を言う」の言葉通り、瞳孔の静的および動的な所見は、日常眼科診療における客観的なバイオマーカとして重要である。さらにその価値は、瞳孔の径や動きを記録し、定量することによって飛躍的に向上する。

 過去には瞳孔の連続写真を一枚一枚手作業で解析していたが、LowensteinOLoewenfeld IE pupillographyを開発、ビデオカメラによる赤外像の撮影によって瞳孔径の変化を定量できるようになった。その後、刺激系と記録系が一体となった瞳孔計が開発されるようになり、1.正確な測定、2.縮瞳潜時など様々なパラメータの解析、3.瞳孔所見の記録と他者比較、4.検者バイアスの除外、5.正常値の設定と比較評価、6.研究への応用 など多くのメリットがもたらされるようになった。瞳孔計の歴史を振り返りながら、それぞれの課題や新しい瞳孔計に期待される機能について考えてみたい。

【利益相反公表基準】 該当なし


◆  従来の瞳孔計とヒトミル

講演者:石川 均(北里大・医療衛生)


1988年 北里大学医学部 卒業

1994年 北里大学大学院 博士課程 眼科専攻修了

米国オハイオ州立大学 薬理学教室留学(3年)

1997年 北里大学医学部 眼科 講師

2002年 国際医療福祉大学附属熱海病院眼科 助教授

2005年 北里大学医療衛生学部 視覚機能療法学 教授

北里大学大学院 医療系研究科視覚情報科学 教授

【受賞歴】

1995年 日本神経眼科学会 若手奨励賞

2012年 日本眼科学会 評議員会賞

 瞳孔は「径」という、極めて定量性の高い数値によって表現されるが、それは明暗、物体との距離、さらに精神状態によって大きく変化し、かつ動揺する。瞳孔は特に視神経疾患の診断、治療効果判定、さらに自律神経の機能評価に幅広く用いられてきた。従来の瞳孔の静的・動的状態は、瞳孔が赤外線に対して反応を示さないことから、赤外線を照射してCCD カメラを用い記録した。この赤外線電子瞳孔計による瞳孔検出は、スライスダイヤルにて行ったが、記録するカメラの位置、スライスの調整、さらに被検者の眼瞼の状態に大きく影響を受け、その測定、記録および評価には熟練と経験を必要とした。

 一方でヒトミルは、それらの点が余すところなく改善され、熟練した検者のみならず、万人が測定、記録可能で、臨床、教育および研究に幅広く用いられる機器であると期待される。本講演では、ヒトミルの使用経験を、従来機と比較しながら、臨床・教育の見地から紹介したい。

【利益相反公表基準】 該当なし


◆ ヒトミルを用いたRAPD の他覚的検出

講演者:中村 誠(神戸大)


1989年 神戸大学医学部 卒業

1995年 神戸大学医学部 眼科 助手

19992001年 ペンシルバニア州立大学 医学部

眼科・細胞分子生理学 ResearchScholar

2005年 神戸大学医学部 眼科 講師

2013年 神戸大学大学院 医学研究科

外科系講座 眼科学分野 教授

ヒトミルは携帯型で両眼同時に瞳孔反応を記録できる機器である。様々な使用用途に用いることができるが、特に有益性が高いものとして、交互点滅対光反射による相対的瞳孔求心路障害(relative afferentpupillary defect, RAPD)の他覚的検出がある。RAPDは非対称の前部視路疾患の機能障害の他覚的指標であり、臨床的意義が高い。RAPDを測定できる既製品も販売されてはいるが、短時間刺激による最大縮瞳量の情報しか利用していないため、交互点滅対光反射試験の判定とは必ずしも相同ではい。我々は、長時間刺激で、瞳孔の縮瞳維持状態を指標とした新たなRAPD 検出法を開発し、肉眼的なRAPDと高い一致性を有し、視野や光干渉断層計(OCT)ならびにOCT 血管撮影の非対称性との相関性も高いことを見出した。本講演では、ヒトミルを用いたRAPD の他覚的検出の実際と意義について紹介したい。

【利益相反公表基準】 有(株式会社ウラタニ・ラボ)


2近年の眼圧測定


モデレーター/笠原 正行(北里大)

緑内障診療において、スムーズな測定が可能な患者に対してはGoldmann 圧平眼圧計を用いた眼圧測定の信頼性が高く評価され、広く臨床の場で活用されています。一方、高齢化が進む社会や緑内障点眼薬の長期使用患者の増加に伴い、全身状態や眼瞼の状態によってはこれまでの測定方法が困難な患者も増え、必要とされる眼圧測定機器にも変化が起きております。また、正常眼圧緑内障患者の割合が8割を超える日本人において、日中の眼圧が低くても進行速度が速い症例に苦慮するケースが少なくありません。点眼の強化や手術を検討するうえで、眼圧の日内変動を把握することは非常に有用と考えます。本セッションでは、手持眼圧計であるアイケア200、自己測定や眼圧変動の把握が可能なアイケアホーム、夜間でも覚醒せずに眼圧変動の測定が可能なトリガーフィッシュなど、近年の眼圧測定機器について3名の演者に御講演頂きます。本講演が明日からのより良い緑内障診療につながることを期待しております。


アイケアic200手持眼圧計の使用経験


講演者:徳田 直人(聖マリ医大)


1999年 聖マリアンナ医科大学医学部 卒業

2005年 聖マリアンナ医科大学 眼科 助教

2013年 聖マリアンナ医科大学 眼科 講師

2020年 聖マリアンナ医科大学 眼科 准教授

 反跳式眼圧計であるアイケア手持眼圧計は高齢化社会に突入した我が国の眼科臨床において欠かせないものとなりつつある。その最上位機種であるアイケアic200手持眼圧計(ic200)は、座位、仰臥位のみならず半座位(斜め)のあらゆる角度での眼圧測定が可能である。しかしながら、眼科臨床における眼圧測定機器のゴールデンスタンダードはGoldmann 圧平眼圧計 や非接触型眼圧計であり、これらの眼圧測定値との差が気になるところである。本講演ではic200とその他の眼圧計で測定した眼圧値の差について自験例と過去の報告を交えて紹介する。

 また、眼圧は測定時の体位に影響を受けることが知られている。ic200を使うにあたり、体位の違いでどの程度眼圧測定値に影響が出るのかを知っておく必要がある。この点についても自験例から解説する。本講演が眼科臨床における手持ち眼圧計の理解に繋がれば幸いである。

【利益相反公表基準】 該当なし


◆ アイケアホーム2の使用経験


演者:齋藤 雄太(昭和大)


20013月 昭和大学医学部 卒業

20059月 米国ノースカロライナ大学

20073月 昭和大学医学部大学院 修了

20074月 昭和大学医学部 助教

20094月 米国カリフォルニア州立大学アーバイン校

20141月 昭和大学医学部 講師

202011月 昭和大学医学部 准教授

 アイケアホームは眼圧を自己測定できる機器で、眼圧の日内変動を知るために非常に有用な道具である。そして近年更に進化したアイケアホーム2が本邦でも発売された。 初代アイケアホームと比べるとアイケアホーム2は仰臥位での眼圧測定が可能になったこと、機器本体に眼圧値が表示できるようになったこと、得られた眼圧データは患者が自分のスマホに専用アプリを用いて蓄積できるようになったこと、さらにアプリのデータがクラウドにアップロードされて、機器を貸し出した医療機関の医師が患者の眼圧データを自身のスマホやPC で確認できるようになったこと、などより使いやすくなっていると考えている。

 このたびアイケアホーム2を使用する機会があったので、その経験や患者へのアンケートなどを元にお話をさせていただく。

【利益相反公表基準】 該当なし


◆ トリガーフィッシュの使用経験


講演者:中元 兼二(日本医大)


1994年 日本医科大学 卒業 日本医科大学付属病院 眼科

1996年 日本医科大学付属千葉北総病院 眼科 助手

2000年 東京警察病院 眼科

2005年 東京警察病院 眼科 医長

2010年 東京警察病院 眼科 副部長

2012年 日本医科大学付属病院 眼科学教室 講師

2021 2021年 日本医科大学付属病院 

                       眼科学教室 准教授

緑内障診療では、眼圧検査は診察時に毎回行わなければいけない必須の検査です。眼圧は、診療時間の一瞬の座位眼圧を測定しています。しかし、眼圧にはいろいろな変動があり、眼圧の変動自体が緑内障進行のリスクファクターであることもわかってきました。

 従来、眼圧日内変動測定は入院で行われていました。そのため、医師および患者の負担が大きいのみならず、入院という特殊な環境および夜間就寝中の突然の覚醒が眼圧に及ぼす影響、また、測定値の再現性が不明なことなどが問題視されてきました。近年、夜間でも覚醒せずに、かつ、あらゆる体位で眼圧変動を連続測定可能なトリガーフィッシュが発売され、眼圧日内変動を気軽に測定できる時代になりました。

本講演では、トリガーフィッシュに関して、演者の体験を中心にお話ししたいと思います。

【利益相反公表基準】 該当なし


展示機器のご紹介



株式会社 ウラタニ・ラボ


瞳孔径測定支援システムHITOMIRU


株式会社ウラタニ・ラボ


瞳孔測定器




株式会社エムイーテクニカ


アイケア IC100 手持眼圧計



株式会社 エムイーテクニカ

 

アイケアHOME2 手持眼圧計



株式会社シード


トリガーフィッシュⓇ システム


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第22回眼科臨床機器研究会(2023年11月11日)

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