第21回眼科臨床機器研究会
日時:2022年11月19日(土) 15:30~18:30
会場:横浜シンポジア
ジョイント開催:The 25th IRSJ(2022)
日眼専門医事業認定番号:12745
主催 眼科臨床機器研究会
会長 庄司 信行(北里大)
事務局長 飯田 嘉彦(北里大)
第21回眼科臨床機器研究会
日時:2022年11月19日(土) 15:30~18:30
会場:横浜シンポジア
ジョイント開催:The 25th IRSJ(2022)
日眼専門医事業認定番号:12745
主催 眼科臨床機器研究会
会長 庄司 信行(北里大)
事務局長 飯田 嘉彦(北里大)
プログラム
1)眼軸長測定装置 アイスター900 モデレーター/飯田 嘉彦(北里大)
・ハーグストレイト社SS-OCT 眼解析装置「アイスター900」のご紹介
森山 恵太(㈱JFCセールスプラン)
・アイスター 900の測定の実際について 上山 楓(北里大)
・眼軸長測定装置アイスター 900のポテンシャル
禰津 直久(等々力眼科)
2)新しいMIGSの流れ モデレーター/笠原 正行(北里大)
・プリザーフロ🄬 マイクロシャントへの期待 河野 雄亮(北里大)
・マイクロフックの改良 庄司
拓平(小江戸眼科内科/埼玉医大)
・iStentとiStent inject Wの長期成績比較 新田 耕治(福井県済生会病院)
3)アコモレフ モデレーター/神谷
和孝(北里大・医療衛生)
・調節機能解析装置 Fk-mapの読み方 梶田 雅義(梶田眼科)
・IOL眼の調節微動 貝田 智子(宮田眼科病院)
・アコモレフ2の後房型有水晶体眼内レンズへの応用
後藤田 哲史(北里大)
1)眼軸長測定装置 アイスター900
モデレーター/飯田 嘉彦(北里大)
現在の白内障手術は屈折矯正手術としての側面が大きくなり、患者の術後満足度を向上させるためには、術後屈折誤差のない眼内レンズの度数を算出することが重要であるが、そのためには精確な生体計測が必須である。ハーグストレイト社 SS-OCT眼解析装置「アイスター900」はスウェプトソースOCTを搭載し、独自のスキャン技術であるマンダラスキャンによる高密度なデータを基にした角膜形状解析や前眼部OCTによる水晶体を含む前眼部構造の評価が可能であり、測定の際にはジョイスティックがなく自動で計測するなどの特徴を備えた新しい生体計測装置である。3人の演者の先生方には、アイスター900の盛りだくさんな機能を紹介していただき、実際の使用経験をもとに操作性の評価や測定のコツ、臨床使用上の評価、アイスター900のポテンシャルについてお話しいただく予定である。
講演者:森山 恵太(㈱JFCセールスプラン)
2017年 株式会社JFCセールスプラン
入社
アイスター900は両眼を自動で測定し、高精度の結果を取得することができるスウェプトソースOCT眼解析装置です。バイオメトリー、前眼部のイメージング、角膜前後面トポグラフィーを同時に取得し、白内障手術計画に必要な良質なデータを提供します。
SS-OCTは白内障眼においても深達性を確保し、高精度な測定と質の高いスキャンイメージの取得を可能とします。スキャンパターンには独自の「マンダラスキャニング」を採用し、多数の交差ポイント情報から高密度なイメージ画像を取得します。
角膜曲率測定にはOCTで行う疑似的なケラトメトリーの他に、反射式の「デュアルゾーンケラトメトリー」を採用しており、従来のIOL定数との互換性に優れています。
またアイスター900にはHill-RBF、Barret、Olsenなど新しい世代のIOL度数計算式が搭載されており、白内障手術計画を一歩進んだものにする可能性を秘めています。
本講演では、最新機器アイスター900の様々な機能についてご紹介します。
◆ アイスター 900の測定の実際について
講演者:上山 楓 (北里大)
2019年 吉田学園医療歯科専門学校 視能訓練学科 卒業
2019年 北里大学病院眼科 入職
近年、技術の進歩に伴い多くの生体計測機器が開発され、バージョンアップを重ねるごとにより精度の高い生体計測が可能となり、測定時間の短縮、測定可能率の向上などが報告されている。アイスター900 (HAAG-STREIT社)は測定形式にスウェプトソースOCTを使用した生体計測機器である。スウェプトソースOCTの採用により、正確な測定と高画質イメージの取得が可能であり、一度の測定で角膜から網膜までの眼全体のバイオメトリーに加え角膜の前後面や水晶体を含む前眼部の形状解析のデータを取得することができる。また、スキャンの高密度化を図ったマンダラスキャンニングパターンや、反射式デュアルゾーンリアルケラトメトリーといった、独自のスキャンパターンを搭載しており、より精度の高い角膜形状の測定が可能である。一方で、測定時にはコツを要する場面にも遭遇する。本講演ではアイスター900の使用感や操作性、測定が困難であった症例、実際に測定する際の注意点等をお伝えする。
講演者:禰津 直久(等々力眼科)
1980年 日本医科大学卒
1980年 天理よろず相談所病院
内科系ジュニアレジデント
1982年 天理よろず相談所病院 眼科シニアレジデント
1986年 日本医科大学眼科 助手
1989年 医学博士
1990年 日本医科大学眼科 講師
1993年 等々力眼科院長
Lenstar🄬の後継機になるEyestar🄬(Haag-Streit社)はSwept-sourceOCTを採用し、眼軸計測などの眼内レンズパワー計算機能、前眼部OCT機能、角膜トポグラフィー機能を搭載し白内障由術と屈折矯正手術に特化されている。角膜後面の計測機能を有し、より正確な眼内レンズのパワー計算が期待できる。ジョイスティックは廃止され、白内障モードでは40秒ほどで両眼が自動計測される。測定時の涙液層の状態を評価し、自動的に瞬きを指示して、より良い状態で計測する。同時に16面のBモード画像から、水晶体やIOLの傾きや偏心も評価できる。角膜トポグラフィーでは高密度の曼荼羅スキャンで計測を行う。これにより測定後でも任意の部位のBスキャンを得ることができる。前眼部OCTと角膜トポグラフィーの計測ソフトは近日追加される予定だが、そのほか角膜Ectasia, ABCDgrading、ICL vault analysi、 Total Keratometric Power, Chamber angleのソフトが予告されている。
2)新しいMIGSの流れ
モデレーター/笠原 正行(北里大)
近年、安全性を重視した緑内障手術として、低侵襲かつ短時間で行うことのできるminimally invasive glaucoma surgery(MIGS)が広く普及してきおります。国内で使用できる機器の種類も徐々に増え、従来の機器の改良版も登場してきております。本セッションの前半では、トラベクレクトミーよりも簡便な低侵襲濾過手術として、2022年5月から国内でも保険収載されているプリザーフロ マイクロシャント
緑内障ドレナージシステムについて御講演を頂きます。後半は、トラベクロトミー眼内法を行う際に広く用いられている汎用性の高いμフックの改良版について、形状の改良と挿入するステント数が増えた第二世代のiStent inject Wについて御講演を頂きます。明日からのより良い緑内障診療につながることを期待しております。
◆プリザーフロ🄬 マイクロシャントへの期待
講演者:河野 雄亮(北里大)
2012年 聖マリアンナ医科大学医学部 卒業
2014年 北里大学病院眼科学教室入局
2017年 東芝林間病院
2018年 北里大学病院眼科
2021年 北里大学医学部 助教
プリザーフロ マイクロシャント 緑内障ドレナージシステムは、生体適合性が高いpoly styrene-block-isobutylene-block-styrene(SIBS)と呼ばれる樹脂で作製された内径70μm、長さ9.5mmのチューブであり、結膜下輪部から前房内に刺入留置することで、前房と眼外の間に房水流出路を作製し、眼圧を下降させる低侵襲緑内障手術である。強膜フラップの作製や周辺虹彩切除の必要がなく、トラベクレクトミーよりも簡便な低侵襲濾過手術として期待されている。本邦では2022年5月から保険収載されている。本講演ではその成績や合併症について、海外での既報と自験例をもとに解説したい。
◆ マイクロフックの改良
講演者:庄司 拓平(小江戸眼科内科/埼玉医大)
2002年 防衛医科大学校医学部卒業
2004年 陸上自衛隊大久保駐屯地医官・千原眼科医員
2008年 防衛医科大学校病院 専門研修医
2012年 埼玉医科大学 眼科 講師
2016年 米国UCSD ハミルトン緑内障センター
客員研究員
2019年 埼玉医科大学 眼科 准教授
2022年 埼玉医科大学 眼科 客員教授・小江戸眼科内科 院長
2010年代以降低侵襲緑内障手術(minimally invasive
glaucoma surgery, MIGS)は世界中で急速に広まり、本邦においても初期から中期緑内障患者に対する第1選択手術として普及した。MIGS普及の背景には様々なデバイスの開発があり、本邦でもいくつもの器具がすでに承認されている。
どのデバイスが普及しているかは各国の医療保険事情や病型により異なるが、本邦ではマイクロフックが最も汎用されている。マイクロフックの利点は、器具がディスポーザブルではないためコストが安価であること、初期のマイクロフックが登場してから年月が経ち、3‐5年の中期データが判明し、眼圧下降効果の信頼性が高まったことが挙げられる。一方で初期モデルも完全ではなく、いくつかの改良点もあるように思われたため、我々は新たなマイクロフックrモデルを開発した。
◆ iStentとiStent inject Wの長期成績比較
講演者:新田 耕治(福井県済生会病院)
1991年 富山医科薬科大学卒業
1993年 富山医科薬科大学眼科助手
1997年 福井県済生会病院眼科医長
2012年~現在 福井県済生会病院眼科部長
2006年 金沢大学大学院医学博士取得
2013年 金沢大学臨床准教授(学外)
日本でも第二世代のiStent inject Wが使用可能となった。『使用要件等基準』が改訂され、正常眼圧緑内障では2成分以上の点眼を使用して15mmHg以上の症例を適応とする条件が撤廃され適応が広がった。
ステントを2個挿入できればより強い眼圧下降が期待できるが、正しく挿入されているかを調べるためにフランジをトロッカー先端で叩いて、正しく挿入されていない場合は空打ちを施行している。
iStent群73眼とinject群50眼の使用後成績を比較してみた。眼圧下降率は、iStent群6か月後19.4、12か月後15.8%、inject群6か月後23.0、12か月後17.7%とinject群の方が高率だった。薬剤数は、iStent群術前2.0、12か月後0.4成分、inject群術前1.7、12か月後0成分とinject群では全例点眼フリーだった。Kaplan-Meier法による12か月生存率はiStent群64.4%、inject群86.0%でinject群の方が良好であった。ステント数が増え有意に眼圧下降効果が大きくなる報告が多いので、inject 群はより有用性に期待ができる。
術後合併症は、前房出血をiStent群で2.7%にinject群で10.0%、一過性眼圧上昇をiStent群で12.3%にinject群で18.0%認めた。inject群では粘弾性物質はヒーロンVを使用したため、残留による影響も考えられた。
両群の安全性は同等で、inject群の方が全例点眼フリーなので有用性が強い可能性がある。
【利益相反公表基準】有(F:グラウコスジャパン、参天製薬、千寿製薬、エレックス)
3)アコモレフ
モデレーター/神谷 和孝(北里大・医療衛生)
現代における視環境は、デジタルデバイスの急速な普及に伴って、従来よりも日々過酷なものとなっています。現代人の目にかかる調節痙攣、調節緊張、テクノストレス眼症などを考える上で、毛様体筋への負荷となる指標として調節微動高周波成分出現頻度(HFC)は大変注目されています。今回のテーマとして取り上げさせていただくアコモレフは、HFCについて調節負荷ステップ毎にカラーマップとして表示可能となっていて、毛様体筋に関与する未知の領域を切り開く可能性が指摘されています。そこで今回は3人のエキスパートとしてデバイスの開発者となる梶田先生にFk-mapの実践的な見方について、貝田先生、後藤田先生に、それぞれIOL眼、ICL眼における調節微動について解説いただく予定です。皆さんと一緒に調節の本質について改めて理解する機会になれば幸いです。是非多くの先生方の御参加をお待ちしています。
◆ 調節機能解析装置Fk-mapの読み方
講演者:梶田 雅義(梶田眼科)
1976年 山形大学工学部
電子工学科 卒業
1983年 福島県立医科大学
卒業
1991-2002年 福島県立医科大学
講師
1992-1993年 福島県立医科大学
附属病院病歴部 副部長
1993-1995年 カリフォルニア大学バークレー校
留学(研究員)
1995-2002年 福島県立医科大学
附属病院病歴部 副部長
2002年 福島県立医科大学
退職
2003年 梶田眼科開設 院長
2018-2021年 東京医科歯科大学医学部
臨床教授
2003年 梶田眼科
院長
スマートフォンの普及に加え、進むリモートワークやオンライン授業の導入によって調節機能や両眼視機能の異常による眼精疲労が増加している。眼精疲労の治療方針の決定や適切な矯正用具の処方には調節機能の観察が必須である。調節機能解析装置のFk-mapは調節機能がビジュアルに観察できるため、眼精疲労や矯正用具の処方には不可欠な装置である。
Fk-mapのデータを最大限に活用するためには、調節機能解析装置の開発の経緯を知るのが近道である。調節機能解析装置の着想と原理が分かれば、調節に関わる診療や研究にFk-mapのデータをどのように活用できるのかが自ずと分かってくると思う。Fk-mapで調節機能を観察すると調節機能の異常のバリエーションはとても多いことが分かる。Fk-mapのデータから患者の訴えを的確にイメージできることも少なくない。
Fk-mapのデータを応用活用して頂き、調節機能の臨床と研究を押し進めて頂きたい。
◆ IOL眼の調節微動について
講演者:貝田 智子(宮田眼科病院)
1995年 宮崎医科大学医学部卒業
1995年 長崎大学眼科学教室入局
1996年 健康保険諫早総合病院
1997年 日本赤十字長崎原爆病院
1999年 南長崎ツダ眼科
2003年 溝口眼科
2006年 宮田眼科病院
白内障術後に原因が特定できない眼精疲労を訴える症例を経験する。IOL眼では調節機能は無く調節痙攣の存在は考えにくいとされてきた。しかしIOL眼に調節負荷をかけるとIOLの位置移動が起こるという報告もある。我々はIOL挿入眼の調節微動を後ろ向きに検討したので紹介する。
対象は2018-20年に白内障手術を行い単焦点IOLを挿入した患者713例1160眼、30-91歳(72.5±8.3歳)。方法は白内障術後2か月(2M)と6か月(6M)にアコモレフSpeedy-i(ライト製作所)1を用いて屈折刺激下における他覚屈折値の微動を計測し高周波数成分出現頻度(HFC)を検討した。結果、2Mの調節安静位のHFC値平均は58.0±6.6dBと有水晶体眼のHFC値と同等で、6Mと調節刺激による差はなかった。また2M6MともにHFC値と年齢、自覚屈折、眼軸長に相関はなかった。65dB以上の高値HFCの割合は2M6Mともに35%で全ての年代に3-4割認めた。
IOL眼と有水晶体眼の調節安静位のHFC値は同等で、IOL眼でも高値HFCが35%に認められることが示された。
◆ アコモレフ2の後房型有水晶体眼内レンズへの応用
講演者:後藤田 哲史(北里大)
2014年 昭和大学医学部 卒業
2016年 虎の門病院 眼科 レジデント
2017年 横浜市立大学市民総合医療センター
眼科 レジデント
2018年 東邦大学医療センター大森病院
眼科学教室 入局
2020年 眼科専門医取得
2021年 北里大学病院 眼科 国内留学
近年PC・スマートフォンの普及に伴い、「眼精疲労」というワードが再注目されている。眼精疲労は屈折異常・斜視/斜位・ドライアイなどが関与するとは言われていたが、その病態・治療については、詳しくは知られていない現状がある。
アコモレフ2は従来の他覚屈折測定(オートレフ)に加えて、調節機能解析が加わった新しい複合型他覚検眼機である。提示された内部固指標に被験者がピント合わせを続けたときの“水晶体の膨らみ” (調節反応量) と “毛様体筋の緊張度合い”(HFC)を他覚的に測定できる。
調節時の毛様体筋の機能を観察することで、眼精疲労・調節異常の原因と病態、そしてそれに伴う日常検査・診療では見えてこなかった眼調節に関しての新たな合併症とその病態・治療方法が明らかになる可能性を秘めている。
本講演では、まずアコモレフ2の測定原理・測定方法を説明した後に、有水晶体眼内レンズ挿入後に稀に経験する、一過性の調節異常を解明すべくアコモレフ2を使用した臨床成績を、自験例を交えて紹介したい。また、その他様々な眼科領域における、病態解明に向けたアコモレフ2の使用例を、既報を元に解説する。
展示機器のご紹介
株式会社 JFCセールスプラン
/ジャパンフォーカス 株式会社
SS-OCT
眼解析装置アイスター900
参天製薬株式会社
レンティスコンフォート🄬
グラウコス・ジャパン合同会社
iStent
inject® W
トラベキュラー
マイクロバイパス システム
株式会社 JFCセールスプラン
/株式会社ライト製作所
ACOMOREF2
/ ACOMOREF2 K-model
株式会社イナミ
IDRA(アイドラ)