第18回眼科臨床機器研究会
日時:2018年10月20日(土) 15:30~18:30
会場:横浜シンポジア
ジョイント開催:The 22nd IRSJ(2018)
日眼専門医事業認定番号:12745
主催 眼科臨床機器研究会
会長 庄司 信行(北里大)
第18回眼科臨床機器研究会
日時:2018年10月20日(土) 15:30~18:30
会場:横浜シンポジア
ジョイント開催:The 22nd IRSJ(2018)
日眼専門医事業認定番号:12745
主催 眼科臨床機器研究会
会長 庄司 信行(北里大)
プログラム
1)神経眼科領域の新しい検査機器 モデレーター/石川 均(北里大)
・視線検出技術について 東川 拓治(㈱ナックイメージテクノロジー)
・Hello‼-他覚的視機能評価の時代へ- 半田 知也(北里大)
・Helloの臨床成績 岩田 遥(北里大)
2)超広角眼底撮影装置ZEISS CLARUS 500、Optosとの比較
モデレーター/柳田 智彦(北里大)
・走査型超広角眼底撮影装置CLARUS
東江 美津子(カールツァイスメディテック㈱)
・ZEISS CLARUS 500、Optosとの比較 フォトグラファーの視点から
永野 幸一(北里大)
・ZEISS CLARUS 500、Optosとの比較 医師の視点から
輿水 学(山王病院)
3)眼科医療とAI モデレーター/飯田 嘉彦(北里大)
・網膜疾患とAI 安川 力(名古屋市大)
・人工知能を用いた眼内レンズパワー計算式 Hill-RBF
禰津 直久(等々力眼科)
・人工知能を用いた円錐角膜の自動診断 神谷 和孝(北里大)
1)神経眼科領域の新しい検査機器
モデレーター/石川 均(北里大)
神経眼科領域の中で特に眼球運動の評価は長きに渡りHess赤緑試験が用いられてきた。Hess赤緑試験は自覚的、且つマニュアルな部分も多く患者の協力も必要で結果のばらつきに悩むことが実情である。
今回、神経眼科領域の他覚的視機能検査器としてHelloが登場した。Helloは視線計測技術を用いて9方向の眼位・眼球運動記録解析、9方向眼位写真、瞳孔計測、立体視検査などの他覚的評価を可能とした装置である。我々はAI時代に対応した神経眼科領域の視機能検査機器として期待を寄せている。本講演では開発・研究に携わっている3名の演者に講演をお願いした。開発元のナックイメージテクノロジーの東川拓治様、発案者である北里大学の半田知也先生、実際に臨床研究で使用している岩田 遥先生の3名で、本講演を通じて神経眼科領域の視機能検査器における新しい息吹を感じていただければ幸いである。
講演者:東川 拓治(㈱ナックイメージテクノロジー)
2001年 入社 技術部 技術2G 配属
2014年 営業技術部 配属
2016年 技術部 視覚計測G 配属
「視線検出技術」とは、人が「何を見ているのかを計測・可視化する技術」です。眼の向きと注視対象物との位置関係から計測することができます。この視線検出技術は様々な分野で利用されています。例えば、学術研究(心理学、脳科学)、マーケティングリサーチ(商品デザイン、広告)、福祉機器(操作)、自動車(安全サポート)などで使用され、現在もその用途は拡大しています。このような多種多様な用途に対応するために、たゆみない新手法の案出がなされ、新しい装置が生み出されてきました。さて、この度弊社では、この視線検出技術を応用した他覚的両眼視機能検査装置
「Hello」(開発コードネーム)を開発しました。この装置は視標を見ているだけで検査ができる被検者に負担の少ない装置です。両眼の向きを同時かつ正確に計測し、片眼毎に別々の映像を提示することが可能です。本講演ではこの装置の特徴となる視線検出の原理とその性能についてご紹介致します。
◆ Hello‼-他覚的視機能評価の時代へ-
1998年 川崎医療福祉大学 医療技術学部
視能矯正学専攻 卒業
2004年 北里大学大学院 医療系研究科
眼科学 修了(博士医学)
2004年 北里大学 医療衛生学部 視覚機能療法学 助手
2005年 北里大学 医療衛生学部 視覚機能療法学 講師
2013年 北里大学 医療衛生学部 視覚機能療法学 准教授
2016年 北里大学 医療衛生学部 視覚機能療法学 教授
視線検出技術を用いた他覚的視機能検査は以前から様々提案されてきましたが、視線検出技術が眼科臨床検査に対応した設定とは言い難い現状にあった。今回ご紹介する他覚的両眼視機能検査装置
「Hello」は眼科臨床検査を目指した視線計測技術を新たに開発され、様々な視機能検査が可能となった。Helloの検査機能として眼位検査、9方向眼位検査(9方向写真同時撮影)、他覚的立体視検査、眼球運動検査(眼球運動速度、潜時など)などが評価可能である。視機能検査時間の短時間化、自覚応答不要、これまで自覚応答が困難であった患者様の評価が可能であるなど、他覚的評価ならでの利点と可能性がある。
本講演では新しい他覚的両眼視機能検査装置「Hello」の各検査機能についてご説明するとともに、Helloの機能を応用し検討している新しい視機能検査(他覚的視野検査)についてもその可能性を紹介する。
講演者:岩田 遥(北里大)
2014年 北里大学 医療生成学部 視覚機能療法学 卒業
2016年 北里大学大学院 修士課程 医療系研究科
視覚情報科学 修了、同博士課程に進学
2017年 北里大学大学院 医療衛生学部
視覚機能療法学 助教
Hess赤緑試験は9方向の眼位ずれを定量することにより、眼球運動制限の定量や、麻痺している外眼筋の特定、またその経過の評価に有用な検査である。この検査は自覚的検査であり、また被検者の示す位置を検者が記載する必要があるため、情報バイアスが生じる可能性がある。また、検査は暗室で施行される必要があり、メーカーによって異なるが検査距離も大きく取る必要がある。
一方、Helloは視線追従技術を用いることにより、他覚的に9方向の眼位ずれを定量することができるため、患者の応答や検査結果の記載の必要もなく、短時間での測定が可能である。更に、コンパクトな設計であるため、診察室においてその場での測定が可能である。本講演において、眼球運動のある患者に対する実際の測定をはじめとして、従来のHess赤緑試験との比較や、抑制のある患者の測定などの応用例を報告する。
2)超広角眼底撮影装置ZEISS CLARUS 500、
Optosとの比較
モデレーター/柳田 智彦(北里大)
広角眼底撮影装置は一回の撮影で通常の眼底カメラより広い範囲を写すことができる装置で、Optos社が世界に先駆けて商品化し、広く普及しています。最近になって、いくつかの会社から複数の機器が市販されるようになってきましたが、それぞれの機種で撮像原理、撮影方法、得られる画像に特徴があります。今回はCarl Zeiss社から今年発売されたばかりの新機種であるCLARUS 500®を取り上げました。
このセッションでは、最初に、カールツァイスメディテックの東江美津子さんに機器の原理や特徴を説明して頂き、続いて、北里大の永野幸一さんに、この機器で実際に患者を撮影したフォトグラファーとしての使用経験を、最後に医師の視点から、山王病院の輿水学先生に、得られた画像をどのように読影し診療で活用しているかを、先行機種であるOptos社製Daytona®との比較を交えて、講演していただくことになっています。
講演者:東江 美津子
(カールツァイスメディテック㈱)
CLARUS500は、超広角、高画質、自然色カラー画像を最大の特徴として今年2月に世界同時発売されました。従来の眼底カメラでは1回の撮影で画角50度に対し、CLARUSは無散瞳でも瞳孔径が2.5mmあれば、1回の撮影で133度、2回の撮影で水平方向200度、4回の撮影で水平・垂直200度の画像が得られます。これは、網膜疾患、特に糖尿病網膜症前駆病変、網膜裂孔などは周辺網膜に観られることが多々報告されており、以前にも増して周辺網膜の観察は重要となっている背景に沿うものです。
CLARUS500は光源に3原色(青、緑、赤)のLED光を採用しており、直接眼底に高速で走査して眼底画像を取得します。3原色を採用していることにより、眼底自体が持つ自然の色合い画像、更には解像度が7μ以下と既存の眼底撮影装置では解像度が最も高く、黄斑部から周辺部の高画質画像が得られます。当日は、CLARUSの基本原理、特徴、機能について説明させていただきます。
◆ ZEISS CLARUS 500、
Optosとの比較 フォトグラファーの視点から
1982年 東京写真専門学校 卒業、
杏林大学医学部眼科学教室 入職
1997年 武蔵野赤十字病院 眼科
1999年 北里大学病院 眼科
2012年 視能訓練士免許取得
眼底カメラの画角は、光学設計上50°程度が限界といわれている。広範囲の眼底を撮影する場合には、パノラマ撮影が必須となるが、検者には一定水準以上の撮影技術が要求される。また、被検者が何度も撮影光を照射される苦痛や撮影後に画像を合成する手間も無視できない。これらの負担を軽減するために簡単な操作で一度に広範囲の眼底が撮影できることが望ましい。
2011年に画角200°の超広角眼底画像が無散瞳で撮影できるOptos社製 200Tx™が発売され、瞬く間に普及していったが、睫毛が写り込みやすいことや赤と緑の2色のみによる疑似カラー画像であることに改良が望まれた。2018年に画角133°のフルカラー眼底画像が無散瞳で撮影できるCarl Zeiss社製 CLARUS 500®発売された。この機器のコンセプトのうち「患者が楽な姿勢を保持した状態で撮影が可能」、「眼瞼や睫毛によるアーチファクトが軽減され、白内障眼でも良い画質が取得できる」といった撮影操作をメインとして、200Tx™の後継機種であるOptos社製のDaytona®と比較検討してみた。
◆ ZEISS CLARUS 500、Optosとの比較 医師の視点から
2003年 北里大学医学部 卒業
2003年 北里大学病院 眼科入局
2006年 海老名総合病院
2011年 北里大学 医学部 助教
2013年 国際医療福祉大学三田病院
講師
2015年 山王病院 講師
2017年 山王病院 アイセンター
副部長
今回2017年に発売された新型のフルカラー広角眼底撮影装置CarlZeissMeditec社のCLARUS 500 (以下CLARUS)を貸し出していただける機会を得ましたので、我々が現在当院で使用している広角眼底撮影装置Optos社のOptos Daytona (以下Optos)とそれぞれの機器の撮影方法やその特徴について検者・被検者の双方の意見をもとにまとめました。そして様々な眼科疾患の実際の撮影画像を用いて、その高精細な画質、中間透光体や睫毛・眼瞼の影響、画角等についてCLARUS・Optosそれぞれの特徴や気を付けるべき点等を比較検討しました。またこのような非常に優れた機能を備えた広角眼底撮影装置の、眼科臨床における役割・注意点について医師の視点から考察しました。
3)眼科医療とAI
モデレーター/飯田 嘉彦(北里大)
人工知能(artificial intelligence: AI)と聞いて皆さんは何を思い浮かべますでしょうか?AIの概念は1950年代から始まりましたが、データのデジタル化、ネットワークの普及、コンピュータの性能の飛躍的な向上により膨大な量のデータの収集と処理が可能になり、現在は第3次AIブームと呼ばれるほどに注目されています。スマートフォンの音声アシスタントや人型ロボット、SNSなどでの画像認識などにもAIの技術が使われていますし、製造や小売業、スポーツや医療の分野など、これまでのAIブームと異なりすでに様々な分野でAIが活用され始めています。
本セッションでは網膜疾患や角膜疾患の診断、眼内レンズ度数計算など、AIを活用した眼科医療の現状と今後の可能性について各分野のエキスパートの先生方に御講演頂き、今後の眼科医療がどのように進化し、我々がどう関わっていけばよいのか探っていきたいと思います。
◆ 網膜疾患とAI
1993年 京都大学 医学部 卒業
1994年 北野病院
2000年 京都大学大学院 医学研究科視覚病態学 助手
2000年 ドイツ・ライプチヒ大学 留学
2004年 倉敷中央病院
2005年 名古屋市立大学
大学院医学研究科視覚科学 助手
2007年 名古屋市立大学
大学院医学研究科視覚科学 准教授
21世紀に入り、光干渉断層計(OCT)の普及により、診断、治療の判断・評価が容易となり、さらに、硝子体手術の進歩、血管内皮増殖因子(VEGF)阻害薬の登場によって、黄斑疾患の治療は飛躍的に進歩しました。最近では、広角眼底撮影機器やOCTアンギオグラフィーなどの登場し、多くの検査機器を巧みに用いて総合的に診断すること(Multimodal
imaging)が重要となり、ますます専門知識が要求され、黄斑専門医の腕の見せ所となっています。一方で、人工知能(Artificial Intelligence: AI)の開発が進み、皮膚科、病理学、放射線科などと共に画像診断へのAIの活用が模索されています。2018年4月には糖尿病網膜症の診断ができるAI眼底カメラ(IDx-DR)が初めて米国FDAに認可されました。
本講演では、名古屋市立大学と株式会社クレスコが共同で開発しているOCT画像のAI(ディープラーニング)を用いた自動診断の試みを紹介します。また、網膜分野でのAI開発、網膜診療の未来について私見を述べたいと思います。
◆ 人工知能を用いた眼内レンズパワー計算式 Hill-RBF
1980年 日本医科大学 卒業
1980年 天理よろず相談所病院
内科系ジュニアレジデント
1982年 天理よろず相談所病院 眼科シニアレジデント
1986年 日本医科大学眼科助手
1988年 日本医科大学眼科医局長
1990年 日本医科大学眼科講師
1993年 等々力眼科院長
眼内レンズのパワー計算にBarrrett UniversalⅡ式やHill-RBFが登場し、予測誤差0.5D以内が90%の時代になろうとしている。Radial Basis Functionという人工知能(AI)の手法を用いたHill-RBFは2016年に公開された。初代のVer.1ではUniversalⅡ式より成績が若干劣っていたが、2018年に発表されたVer.2ではUniversalⅡ式を超えるとHillは述べている。従来の計算式では、ユーザーが症例数を増やしても眼内レンズ定数の精度が改善するのみで、計算式そのものは変わらなかった。AIでは、開発者が症例数を増やして学習を強化することによりシステムそのものが成長していくことになる。現在のHill-RBFは、眼軸長、角膜屈折力、前房深度の3つの変数だけで、これ程の成績を出しており、今後のさらなる進化が期待できる。
◆ 人工知能を用いた円錐角膜の自動診断
1993年 神戸大学 医学部医学科 卒業
1996年 東京大学 医学部眼科学教室 助手
2001年 国立病院機構 東京病院 眼科医長
2003年 公立学校共済組合関東中央病院 眼科部長
2006年 北里大学 医学部眼科学 専任講師
2011年 北里大学 医学部眼科学 准教授
2017年 Cleveland Clinic,
Cole Eye Institute
2017年 北里大学 医療衛生学部視覚生理学 教授
円錐角膜は、角膜前方突出と菲薄化によって強度近視性乱視のみならず、不正乱視を伴うことで視機能が低下します。眼科医であれば誰もが知っていて、日常診療で必ず遭遇する疾患の一つです。本疾患の診断には角膜形状解析が基本であり、レーシックを施行すると重篤な角膜拡張症を生じ得ることから、疾患のスクリーニングは極めて重要と考えられます。さまざまなスクリーニングテストが提唱されていますが、どれも一長一短があり、100%の診断精度には至っていません。
昨今、機械学習を初めとする人工知能による画像診断が注目されており、眼科診療でも診断補助や遠隔地診療への応用が期待されています。しかしながら、網膜疾患や緑内障診断が主体であり、前眼部における人工知能の応用は十分とは言えません。そもそも円錐角膜は、角膜形状解析の画像情報をもとに診断を行いますから、人工知能との相性は良く、その特性を活かせる可能性が高いと考えられます。
本講演では、機械学習の一つであるディープラーニング法を用いた円錐角膜の病期分類や診断能について得られた知見を紹介し、その現状と課題を考えてみたいと思います。
展示機器のご紹介
株式会社 JFCセールスプラン
/ジャパンフォーカス株式会社
ハーグストレイト社
レンズスターLS900
カールツァイスメディテック
株式会社
走査型超広角眼底撮影装置
CLARUS
株式会社
ナックイメージテクノロジー
EMR Hello
株式会社
KY CenterVue
広角眼底LED
共焦点スキャナーEidon Af
株式会社
ニコンヘルスケアジャパン
超広角走査型レーザー検眼鏡 Daytona
株式会社
シャルマン
山根氏ダブルニードルガイド
稲村式前嚢鑷子