第16回眼科臨床機器研究会
日時:2016年10月22日(土) 15:30~18:30
会場:横浜シンポジア
ジョイント開催:The 20th IRSJ(2016)
日眼専門医事業認定番号:12745
主催 眼科臨床機器研究会
会長 庄司 信行(北里大)
第16回眼科臨床機器研究会
日時:2016年10月22日(土) 15:30~18:30
会場:横浜シンポジア
ジョイント開催:The 20th IRSJ(2016)
日眼専門医事業認定番号:12745
主催 眼科臨床機器研究会
会長 庄司 信行(北里大)
プログラム
1)新しい手術用糸 モデレーター/後関 利明(北里大)
・新しい斜視手術用縫合-distinguishable suture- 後関 利明(北里大)
・より安定した眼内レンズ縫着術を行うための縫着糸 飯田 嘉彦(北里大)
・スーチャートラベクロトミー変法と糸の作製 陳 進輝(北海道大)
2)前眼部OCT モデレーター/飯田 嘉彦(北里大)
・前眼部OCT CASIA2の機能とその応用
山本 聡(㈱トーメーコーポレーション)
・白内障領域の前眼部OCT使用経験 佐藤 信之(北里大)
・前眼部OCTによるPhakic IOLのレンズサイズ選択
五十嵐章史(山王病院アイセンター)
3)OCT angiography モデレーター/柳田 智彦(北里大)
・OCT angiographyの原理と特徴 春木 崇宏(北里大)
・網膜血管疾患におけるOCT angiographyの有用性 野崎 実穂(名古屋市立大)
・脈絡膜疾患への臨床応用 森 隆三郎(日本大)
1)新しい手術用糸
モデレーター/後関 利明(北里大)
◆ 新しい斜視手術用縫合糸-distinguishable suture-
講演者:後関 利明(北里大)
2007年 北里大学 医療系研究科大学院卒業
2012年 北里大学 医学部眼科 診療講師
2013年 北里大学メディカルセンター 眼科課長
2014年 北里大学医学部眼科 講師
2015年-2016年 Jules Stein Eye Institute, UCLA
2016年 北里大学医学部眼科 講師(復職)
現在の斜視手術の原型は前世紀にほぼ完成した術式で、進歩のない手術であると思われがちである。その反面、白内障手術や網膜硝子体手術の進歩は目覚ましいものであり、その進歩の一旦は手術機器の進歩によるものと思われる。その為、大掛かりな手術用機器を使用しない斜視手術にとっては、進歩する機会は少なかった。しかしながら、斜視手術に使用する機器の中にも見直しが必要なものはあり、筆者は外眼筋に使用する縫合糸に注目をした。一般的にどの縫合糸も、1パックに入っている糸の色は同じ色である。それを筆者はクラウン・ジュン河野製作所の協力の下、違う色(白×緑)の糸を1本づつ(計2本)入っているパックを作成した。この糸を使用することで、糸の取り違いを防ぐことができる。また、糸を色で識別することで手術教育が向上した。色を変えるというシンプルな発想だが、そのメリットは大きく、斜視手術以外の応用も期待できる。
本発表を聞いて皆様方にも新しいアイデアが生まれれば幸いです。
◆ より安定した眼内レンズ縫着術を行うための縫着糸
講演者:飯田 嘉彦(北里大)
2001年 北里大学医学部卒業、北里大学眼科入局
2007年 北里大学大学院医療系研究科
博士課程修了、学位取得
2008年 北里大学医学部眼科 助教
2012年 北里大学医学部眼科 診療講師
2014年 北里大学医学部眼科 専任講師
水晶体嚢内摘出後や広範囲なZinn小帯断裂例、眼内レンズ(以下IOL)偏位を生じた症例などにおいて、眼内にIOLを固定する方法として、以前よりIOL縫着術が施行されてきた。
IOL縫着は眼内に長い針を用いて通糸し、IOLの支持部に糸を結紮するという手技の煩雑さや、長期的な経過における縫合糸の経年劣化によるIOL偏位などの問題点が有り、最近では支持部を強膜トンネル内に埋没させるIOL強膜内固定が注目されているが、前眼部術者の視点からすると、散瞳不良例などに対して術中に糸を利用してIOLをコントロールできるIOL縫着術は有用な術式であると考えている。
本公演では、縫着手術をより安定して行うために開発した、針の形状を工夫し、糸の長期安定性という観点から従来のポリプロピレンではなくポリフッ化ビニリデン(PVDF)を採用した縫着用ループ針を実際の手術の動画と共に紹介する。
◆ スーチャートラベクロトミー変法と糸の作製
講演者:陳 進輝(北海道大学病院 眼科診療教授)
同年 北海道大学付属病院・研修医
1988年 市立砂川病院・医師
1989年 北海道大学付属病院・医員
1992年 社会事業協会富良野総合病院・医長
1993年 北海道大学病院・助手
2000年 北海道大学・医学部講師
2003年 北海道大学病院・眼科講師
2009年 北海道大学病院・眼科診療准教授
2010年 北海道大学病院・眼科診療教授
2011年 慶應義塾大学医学部 非常勤講師
(日本緑内障学会評議員)
トラベクロトミー(線維柱帯切開術)は、主流出路の流出抵抗が存在する傍シュレム管内皮網組織を切開することで、前房部からシュレム管への房水流入を促進させ、眼圧下降を図る生理的な房水流出路再建術である。
これまで我が国で行われてきたトラベクロトミーは、コの字型の金属プロープ(トラべクトローム)を用いるため、切開範囲は最大で120°である。一方、スーチャートラベクロトミー変法は糸を用いて切開するため、全周の線維柱帯を切開できる。切開範囲が大きくなればなるほど利用できるシュレム管以降の流出経路も増えるため、より安定した高い眼圧下降効果が期待できる。
今回の講演では、スーチャートラベクロトミー原法と変法との違い、眼外法と眼内法の違い、さらに使用する糸が完成までの道程についてお話したい。
2)前眼部OCT:CASIA2
モデレーター/飯田 嘉彦(北里大)
現在、OCTは前眼部領域の撮像にも用いられ、CASIA2(トーメーコーポレーション)は、角膜形状解析や隅角解析に加え、水晶体後面までを一枚の画像に収めることが可能となり、白内障手術や屈折矯正手術の分野で重要なツールとなることが期待されています。今回は3名の演者の先生方に器械の特徴や、各分野での臨床応用への可能性について御講演頂き、そのポテンシャルに迫りたいと思います。
◆ 前眼部OCT CASIA2の機能とその応用
1982年 名城大学商学部卒業
同年 東洋コンタクトレンズ株式会社入社
メディカル部門に配属
1989年 株式会社トーメー入社 営業企画室に配属
2001年 株式会社トーメーコーポレーションに社名変更
2013年 営業部営業支援課配転
国産初の前眼部専用OCT”SS-1000CASIA”を開発して8年余り、1.3ℳm帯の赤外線レーザーを用いた当時としてはまだ珍しいSwept Source 方式を採用し、診断に必要な解像度と高速スキャンによるΦ16mmの撮影範囲を確保しました。1.3ℳmの波長帯は組織深達度が深く、角膜前面から水晶体付近まで同時に撮影が行え、隅角の描出に優れています。
これらの特性を生かした全周の隅角解析をはじめ、角膜形状解析など前眼部解析専用のアプリケーションも多く搭載されて進化していきました。
昨年末に待望の後継機“CASIA2”を発売しました。本装置は多くの医療施設からのご要望にお応えして、測定光の可干渉領域を拡大し、角膜全面から水晶体後面までを一枚の画像に収めることに成功しました。 これにより白内障の手術前に必要な前眼部の情報や眼内レンズの度数計算、眼内レンズの挿入位置の確認などが可能となりました。
撮影範囲の拡大を可能にした技術的な要因とそれを活用したCASIA2の機能について概説します。
◆ 白内障領域の前眼部OCT:CASIA2の使用経験
講演者:佐藤 信之(北里大)
2006年3月 北里大学医学部 卒業
2008年4月 北里大学病院 眼科入局
2013年3月 北里大学医学部大学院
医療系研究科博士課程卒業
2014年10月 北里大学医学部眼科学教室
助教(研究員)
光干渉断層計(以下OCT)の歴史はFujimotoらの報告(Science.1991)に始まり、当初のTime-domain方式から、Fourier-domain方式であるSpectral-domain OCT, Swept source OCTへと技術革新が進んだことで、より高速・高分解能・高深達度へと、性能の向上が進んでいる。現在市販されているSwept Source OCTの一つである、CASIA2(©株株式会社トーメーコーポレーション)は、角膜・前房・隅角の全周から水晶体までを短期間で撮像・解析可能であり、特に水晶体後面までの深達度を得たことが特徴的である。緑内障評価や老視症例の水晶体の形状評価など、眼科領域における様々な用途への期待は尽きないが、白内障手術症例においても、眼内レンズ度数計算への応用、屈折誤差の原因評価、手術ハイリスク症例の病状評価など、様々な有用性が期待される。今回は白内障領域に絞り、つたない経験ではあるが、その有用性を紹介したい。
◆ 前眼部OCTによる Phakic IOLのレンズサイズ選択
2003年3月 北里大学医学部卒業
2003年5月 北里大学眼科教室入局
2014年4月 北里大学病院眼科 診療講師に任用
2015年4月 北里大学眼科 講師に任用
2016年4月 山王病院アイセンター眼科部長
国際医療福祉大学準教授に任用
後房型Phakic IOL であるICL(STAAR社)による近視矯正手術はLASIKをはじめとした角膜屈折矯正手術に比べ、術後の屈折が安定し視機能も優れている他、眼表面への影響が少なくドライアイなど術後の不定愁訴がない優れた術式である。近年ではHole ICL(ICL KS-AquqPORT®)も認可されその安全性は高い。ICLは虹彩下の毛様溝にフットプレートを挿入し眼内で固定するが、毛様溝間距離(STS)を直接測定することが難しいことから現在は角膜横径としてWhite to White(WTW)を測定し、間接的にレンズサイズを決定している。しかしWTWを用いたサイズ決定ではWTWが不明瞭となる例があり、時にサイズがミスマッチとなりえる。以前我々は長深度前眼部光干渉断層計(OCT)を用いてSTSが測定できた症例について得られる前眼部パラメーターと相関をとったところ、隅角間距離(ATA)と強い相関を得た(第69回日本臨床眼科学会発表)。そこで今回我々は最新の前眼部OCTであるCASIA2(TOMEY社)を使用しATAを用いた新たなICLサイズ選択を考案する。
3)OCT angiography
モデレーター/柳田 智彦(北里大)
今回は、それらの中でも他社に先行してOCT angiographyが搭載されたRTVue XR Avanti™(Optovue®社)を主に取り上げました。蛍光造影のように造影剤を使用しないため、患者の負担が少なく、より簡便に網脈絡膜血管を映し出すことができます。その得られた画像を解釈するには、網膜や脈絡膜の血管がどのように抽出されるかを理解して読影する必要があります。
このセッションでは、機器の原理、網膜血管疾患、脈絡膜疾患について、エキスパートの先生方に講演していただくことになっており、聴衆の方々がOCT angiographyの理解を深める機会になればと思います。
◆ OCT angiographyの原理と特徴
2010年 北里大学病院眼科
2013年 海老名総合病院眼科
2015年 北里大学病院眼科
近年、造影剤を使用することなく、網脈絡膜の血流を画像化するOCT angiographyが開発され、臨床の現場でも用いられるようになってきた。
そのなかの一つであるRTVue XR Avanti™(Optovue®社製)はSplit Spectrum Amplitude Decorrelation Angiography(SSADA)と呼ばれる原理によって、連続撮影した複数枚のOCT画像から、眼底内の静止している部分(組織)と動きのある部分(血流)を判別し、網膜血管内の血流の様子を構築している。
非侵襲的に血管構造を観察することができ、従来の蛍光造影では見ることのできなかった毛細血管レベルの微細な構造変化や、蛍光漏出のため観察困難であった新生血管を描出することが可能である。
蛍光造影に置き換わるものではないが、日常診療において有用性が高い検査機器と言える。今回、RTVue XR Avanti™の原理、特徴を中心にその使用経験について述べる。
◆ 網膜血管疾患におけるOCT angiographyの有用性
講演者:野崎 実穂
(名古屋市立大学大学院医学研究科 視覚科学)
名古屋市立大学眼科学教室入局
1997年 名古屋市立大学眼科学教室助手
2004年 米国ケンタッキー大学眼科フェロー
2006年 名古屋市立大学眼科学教室病院講師
2008年 同 講師
OCT angiographyは、造影剤を用いることなく、網脈絡膜微小循環をあたかも蛍光眼底造影検査のように描出できるため、日常臨床での有用性が期待されている。また従来の造影検査では評価できなかった3Dの層別解析も可能であることから、病態の新たな理解にもつながると思われる。一方で、OCT angiographyは、従来の蛍光眼底造影検査で評価できる〝漏出″は評価できないデメリットもある。また、現在ソフトウェアが次々とアップデートされてきているものの、プロジェクションアーチファクトなどの問題もあり、OCT angiography画像を正しく解釈することも重要であろう。
本講演では、日常臨床でよくみる糖尿病網膜症を中心に、主にRTVue XR Avanti(Optovue社)およびDRI OCT Triton(トプコン社)を用い、OCT angiographyの有用性について検討したい。
◆ 脈絡膜疾患への臨床応用
講演者:森 隆三郎
(日本大学医学部視覚科学系眼科学分野)
駿河台日本大学病院眼科 入局
2001年 駿河台日本大学病院眼科 助手
2004年-2005年 ベルギー王国 GENT大学眼科 留学
2008年 日本大学医学部視覚科学系眼科学分野 助教
2012年 日本大学医学部視覚科学系眼科学分野
診療准教授
2014年 日本大学病院アイセンター 外来医長
Optical coherence tomograph angiography (OCTA)は、動きのあるもの(=血流のあるもの)を検出するが、黄斑部の網膜色素上皮(RPE)より上の網膜血管の描出には優れているが、加齢黄斑変性(AMD)や中心性漿液性網脈絡膜症(CSC)のように主病巣がRPEより下に存在する脈絡膜疾患への臨床応用は脈絡膜毛細血管や脈絡膜血管および病的となる脈絡膜新生血管(CNV)の検出がどの程度可能となるかによって決まる。CNVを検出する際には、OCTAの自動層別解析で表示されるSuperficial(表層)、Deep(深層)Outer Retina(毛細外層)、Choroid Capillary(脈絡毛細血管板層)の4層からOuter RetinaとChoroid Capillaryで描出される所見で判定する。さらに詳細に病巣を検出するのには、そのChoroid Capillaryの画像のセグメンテーションの幅を任意に設定し、それを上下にずらすことで病巣を描出させる。しかし、Projection ArtifactなどのArtifactにより、存在しない病巣を描出してしまうこともあるので読影の際は注意が必要である。
本講演ではTVue® XR™ Avanti™(Optovue®社)で撮影された画像について症例を提示し解説する。
展示機器のご紹介
株式会社トーメーコーポレーション
CASIA2
株式会社ニデック
RS-3000 Advance
アキュラ株式会社
AngioVue
株式会河野製作所
白内障縫着術用ループ針
株式会社はんだや
陳氏スーチャートラベクロトミー糸