第13回眼科臨床機器研究会
日時:2012年10月13日(土) 15:30~18:30
会場:横浜シンポジア
ジョイント開催:The 16th IRSJ(2012)
日眼専門医事業認定番号:12745
主催 眼科臨床機器研究会
共催 日本眼科医療機器協会
会長 庄司 信行(北里大)
第13回眼科臨床機器研究会
日時:2012年10月13日(土) 15:30~18:30
会場:横浜シンポジア
ジョイント開催:The 16th IRSJ(2012)
日眼専門医事業認定番号:12745
主催 眼科臨床機器研究会
共催 日本眼科医療機器協会
会長 庄司 信行(北里大)
プログラム
1)緑内障インプラント手術 モデレーター/森田 哲也(北里大)
・バルベルト緑内障インプラントの製品概要・特長
上山 雅大(エイエムオー・ジャパン㈱)
・新しい緑内障デバイス”アルコン エクスプレスTM
緑内障フィルトレーション”の臨床的意義
赤木 真一(日本アルコン㈱)
・バルベルト緑内障インプラント®の使用経験 徳田 直人(聖マリ医大)
・Ex-PRESSを使用したインプラント手術 渡邉 三訓(社保中京病院)
2)一般講演 モデレーター/柳田 智彦(北里大)
・チタン合金の素材特性と眼科用鋼製小物への応用
多田 弘幸(㈱シャルマン)
・ERG・・・角膜電極vs.皮膚電極 吉川 眞男(㈲メイヨー)
・自動視野計 コーワ AP-7000のご紹介 原 拓也(興和㈱)
3)新しい眼底カメラ モデレーター/市邉 義章(北里大)
・Nonmyd WXを用いた立体眼底画像による視神経乳頭解析の有用性
浅川 賢(北里大)
・広角デジタル眼底カメラRet Cam3®を用いた未熟児診療
池田 哲也(北里大)
・超広角走査レーザー検眼鏡Optos® 200Txの使用経験
渡辺 五郎(群馬大)
モデレーター/森田 哲也(北里大)
トラベクレクトミーは代表的な緑内障手術であり、眼圧は良好に下降する一方、合併症が多い手術でもあります。そこで、眼圧下降しつつ合併症を少なくする目的にてインプラント手術という、新たな手術方法が開発されております。日本では今年、3種類のインプラントデバイスが認可され、緑内障診療ガイドラインにて緑内障インプラント(チューブシャント)手術に関する項目が追加されました。ガイドラインによると、インプラントデバイスはトラベクレクトミーの実施が困難な症例や、手術により重篤な合併症が予想される場合に使用が認められるようです。このセッションでは、①バルベルト②エクスプレスという新しいデバイスの紹介および臨床経験等をご講演いただき、皆様に緑内障インプラントについての理解を深めていただければと思います。
◆ バルベルト緑内障インプラントの製品概要・特長
講演者:上山 雅大(エイエムオー・ジャパン株式会社)
1999年 エイエムオー・ジャパン株式会社
サージカル事業部入社
2011年 同社マーケティング本部
サージカルマーケティングマネージャー
バルベルト緑内障インプラントは欧米では1990年代より販売されており、伝統的に難治性の緑内障治療に用いられてきました。日本において2011年8月に国内初の眼内ドレーンとして厚生労働省の承認を受け、2012年4月より緑内障治療用インプラント挿入術にて保険適用されています。
近年、欧米においてマイトマイシンC併用線維柱帯切除術とチューブシャント手術の多施設共同前向き比較試験(TVTスタディ)などが報告され、海外では難治性緑内障以外の通常の緑内障に対しても治療選択肢としての報告があります。しかし国内では臨床症例も少ないこと等から現時点においては、チューブシャント手術の実施には慎重な手術適応が求められています。
今回はバルベルト緑内障インプラントの製品概要・特長の説明をはじめ、現時点における適応や海外での使用状況などを製造販売元の立場よりご紹介させていただきます。
◆ 新しい緑内障デバイス“アルコン エクスプレス™
緑内障フィルトレーション”の臨床的意義
講演者:赤木 真一(日本アルコン株式会社)
2006年 日本アルコン株式会社 入社
2006年 医薬品事業部 プロダクトマネージャー
2008年 アメリカ本社 出向
2009年 サージカル事業部 プロダクトマネージャー
日本アルコン株式会社では、緑内障患者の眼圧低下のための手術で用いられる「アルコン エクスプレスTM緑内障フィルトレーションデバイス」(以下、アルコン エクスプレス)を6月に販売致しました。
アルコン エクスプレスは、線維柱帯切除術が必要とされる緑内障患者に対し、房水流出経路の役割を果たすフィルトレーションデバイスであり、線維柱帯切除術と比較し、より簡便に房水流出経路を作成でき、線維柱帯切除術と同等あるいはそれ以上の眼圧下降効果を示すこと、また術後の合併症がトラベクレクトミーに比べ少なく、より少ない浸襲や炎症の少なさ、術後視力の回復の早さ、創傷部位の回復の早さも文献的に報告されており、緑内症患者に対して高い満足度を提供できるデバイスです。
今回は、アルコンエクスプレスの臨床データを中心に、臨床的な意義についてお話しさせて頂きます。
◆ バルベルト緑内障インプラント®の使用経験
講演者:徳田 直人(聖マリアンナ医科大学 眼科額教室)
1999年 聖マリアンナ医科大学医学部卒業
1999年 聖マリアンナ医科大学医学部附属病院研修医(眼科)
2005年 聖マリアンナ医科大学大学院医学研究科卒業
学位(医学博士)取得
2005年 聖マリアンナ医科大学 眼科 助教
今年は本邦における本格的な緑内障インプラント手術元年となった。その先鋒として登場したのがバルベルト緑内障インプラント®(以下バルベルト)である。バルベルトの適応については、複数回の緑内障手術が無効、また結膜瘢痕症例などの難治性緑内障症例とされているが、このようなただでさえ困難な手術になることが予想される症例において、バルベルトを選択する理由について考察する。加えて、当院におけるバルベルトの選択基準についても紹介する。また、初めてバルベルトを用いた緑内障インプラント手術を行うにあたり、必要な準備と知識、実際の手術手技について解説し、術後経過、特にバルベルトに特有な術後合併症の予防と対処法についても述べる。
◆ Ex-PRESSを使用したインプラント手術
講演者:渡邊 三訓(社会保険中京病院)
1994年 名古屋大学医学部卒業
1994年 社会保険中京病院 眼科入局
2004年 社会保険中京病院 眼科医長 就任
緑内障チューブシャント手術に用いられるインプラントには大きく分けて、房水貯留空間形成用のプレートを持つものと持たないものに分けられる。このうちプレートをもたないインプラントの一種であるアルコン エクスプレスTM 緑内障フィルトレーションデバイス(Alcon社製、以下Ex-PRESSと略す)は2011年12月に医療機器の承認を取得した。術式としては従来の線維柱帯切除術と同様に輪部基底の半層強膜弁を作成し、輪部から本体を挿入し、強膜弁及び結膜弁を縫合するため、強膜弁からの房水流出、結膜濾過胞での房水吸収機序は線維柱体切除術と同様と考えられるが、虹彩切除に伴う合併症の回避や前房開放時間短縮、前房からの房水流出面積が一定となるなどの利点があり、術中・術後の合併症が低いことが報告されている。本講演では実際の手技や注意点、適応や合併症などについて自件例を交えて述べる。
2)一般講演
モデレーター/柳田 智彦(北里大)
◆ チタン合金の素材特性と眼科用鋼製小物への応用
多田 弘幸,山下 一広,酒井 祐司(株式会社シャルマン)
手術手技の進歩に伴って使用される機器も同様に高度化・高機能化というイノベーションが望まれる。主に顕微鏡下で行われる眼科手術では多くの精緻な鋼製機器が用いられているが、ほとんどの機器は、近年、増加傾向であるチタン系合金製の機器も含め1種類の素材で構成されている。一般にチタン合金の利点としては「軽量」、「錆びない」等のことが良く知られているが、実際には多種のチタン合金が存在し、その物性も多様であることは意外に知られていない。今般、我々は種々のチタン合金の素材特性を比較し、また鑷子や持針器などの機能部毎に異なる素材を用いた製品設計を行い、それらの機械的特性を測定したので報告する。対照は従来、医療用として汎用されているSUS304ステンレス鋼及び類似デザインのステンレス製鋼製機器とした。製品の適所に適材となる異なるチタン合金を用いることは、軽量かつ適切な剛性を有する製品開発の上で有用であった。
◆ ERG・・・角膜電極 vs. 皮膚電極
吉川 眞男(有限会社メイヨー)
ERG(網膜電位図)は網膜を他覚的に検査ができることで、ヒトのみならずマウス、ラットをはじめサルやウサギにも広く活用されている。ERGを記録するには角膜上にコンタクトレンズ電極を装着して記録するのが一般的な方法である。ヒトでは皮膚電極のERGも古くから試みられてきたが、ノイズ成分が大きく生体反応だけを抽出するには難しく臨床的には応用されないままだった。
ノイズの大半は100V電源からくるハムノイズで、東日本は50Hz、西日本は60Hzの交流波(サイン波)である。苦労して記録したERG波形の上に規則正しいサイン波が重なり悩ましい思いをすることがある。このハムノイズをあらかじめ除去し、生体(眼)からくる反応(ERG)だけを抽出しようと試みたのが誘発反応記録装置ピュレック(PuREC:Pure Recording, Pulse Reference Power Line Noise Reduction 特許出願済)である。
このピュレックの開発により角膜電極が無くても、下眼瞼に皿電極を付ければ振幅は小さいが、コンタクトレンズ(角膜)電極とほぼ同じ波形を記録することができる。乳幼児や子供、手術直後のERGも記録可能になり、活用範囲の広がりが期待できる。
◆ 自動視野計 コーワ AP-7000のご紹介
原 拓也(興和株式会社)
近年、OCTにより網膜の構造については詳細なデータが得られるようになりました。一方、視野検査は、患者様の視機能を評価する目的から、これまでと同様に不可欠な検査ですが、従来の視野計では構造と機能の対応評価が難しい場合もありました。
弊社の新しい自動視野計 コーワ AP-7000では、眼底カメラやOCT等の眼底画像が示す構造異常部位に対応させた視野検査が可能となっており、新たに作成された正常眼データベースと組合わせることによって、構造と機能の対応評価が容易にできます。また、これまで世界中で広く実施されてきました従来の視野検査につきましても、様々な解析指標を自動で表示・出力することができ、患者様へのさらに幅広い対応が可能となっております。
本研究会では、眼底対応視野検査と新しい正常眼データベース、新たに追加された解析指標についてご紹介いたします。
3)新しい眼底カメラ
モデレーター/市邉 義章(北里大)
報道写真がそうであるように1枚の写真は我々に多くを語り、様々な想像を駆り立てます。その写真も医学というサイエンスの世界では正確性、再現性、情報量の多さ、さらには検者、被検者の双方の負担軽減のための簡便さが要求されます。市販されている映像機器の発展は目覚ましいものがありますが、眼科領域でも様々な機器が登場しています。今回は「新しい眼底カメラ」と題して、Nonmyd WXを用いた立体眼底画像による視神経乳頭の解析、広角眼底カメラRetCam3を用いた未熟児診療、そして超広角走査レーザー検眼鏡Optos 200Txについて3人の演者に紹介していただきます。いずれも眼科診療の新たな方向性を生み出す可能性がある機器です。今までのカメラと何が違うのか、また、その有用性、将来性などをお話しいただこうと思います。
◆ Nonmyd WXを用いた立体眼底画像による視神経乳頭解析の有用性
講演者:浅川 賢(北里大)
2003年 北里大学医療衛生学部視覚機能療法学専攻 卒業
2003年 国際医療福祉大学附属熱海病院 入職
2010年 北里大学大学院医療系研究科眼科学
修了(医学博士)
2010年 北里大学医療衛生学部視覚機能療法学 助教
緑内障診療における視神経乳頭(disc)形状変化は、陥凹(cup)の拡大や辺縁部(rim)幅の減少の観察が重要である。より正確な形状の観察には立体画像が必要であり、本邦における緑内障診療ガイドラインにおいても立体眼底写真の使用が推奨されている。一方で立体画像は、撮影自体の困難さに加え、主観的な解釈に依存せねばならない欠点があった。これに対し、nonmyd WX(コーワ社)は、無散瞳にて同一光学系による2方向の光路から左右視差画像の同時撮影が可能であり、disc形状を画像解析に基づいて定量的に算出することができる。
今回、nonmyd WXの立体眼底画像解析ソフトによるdisc形状パラメータにおいて,検者内の再現性や緑内障専門医と1年目視能訓練士による検者間の一致性、共焦点走査型レーザー検眼鏡にて得られた解析パラメータやHumphrey視野計の視野指標との相関を検討した。
本講演ではそれらの結果を示し、立体眼底画像による視神経乳頭解析の有用性を報告する。
◆ 広角デジタル眼底カメラRetCam3®を用いた未熟児診療
講演者:池田 哲也(北里大)
2003年 北里大学医学部卒業
2003年 北里大学眼科学教室入局
2005年 武蔵野赤十字病院出向
2008年 北里大学眼科
2011年 北里大学眼科学教室助教
近年の周産期医療の進歩による早産児救命率上昇に伴い、未熟児網膜症(Retinopathy of Prematurity以下ROP)は増加しつつあり、網膜剥離に至る重症例も少なくない。一方で医師不足の昨今、ROP診療に携わる眼科医は絶対的に不足しているのが現状である。ROPのスクリーニング方法としては双眼倒像鏡による観察がスタンダードであるが、主観的である上に経験を要する。そこで広角デジタル眼底カメラRetCam3® (Clarity社、以下RetCam3®)を用いたROP診療が注目されている。眼底所見を画像として客観的に記録できるため、患者家族への説明や小児科医との情報の共有が円滑になる。さらには眼科医不在の施設であってもRetCam3®を用いたROPの遠隔診療が可能となった。医療の集約化が進む現在、地域医療を維持する手段としても非常に有用であり、また眼科医と小児科医の連携を強めることで、ROPと全身管理との関連性の解明、診断・治療の標準化、医学教育等、ROPの診療自体を飛躍的に進化させる可能性を秘めている。
◆ 超広角走査レーザー検眼鏡Optos®200Txの使用経験
講演者: 渡辺 五郎(群馬大)
1998年 金沢医科大学卒業
1999年 群馬大学眼科学教室入局
2001年 利根中央病院眼科勤務
2002年 下仁田厚生病院眼科勤務
2003年 群馬大学医学系研究科大学院
2007年 羔羊会弥生病院勤、群馬大学眼科学教室非常勤講師
超広角走査レーザー検眼鏡Optos® 200Tx(Optos社製、中央産業貿易)は、赤(633nm)、緑(532nm)、青(488nm)の波長のレーザーで眼底をスキャンすることにより眼底画像を描出する。それぞれの波長は眼底での組織深達度が異なるため、網膜から脈絡膜までの情報が広く収集できる。緑と赤の波長により疑似カラー眼底写真、青の波長のレーザーでフルオレセイン蛍光造影、眼底自発蛍光は緑の波長のみを用いる。Optomap plusと呼ばれる通常の撮影では、1回の撮影(0.3秒)で眼底約200度、3900×3072ピクセルの画像を撮影でき、さらにResMax機能を用いると眼底100度を3072×3072ピクセルで高解像度撮影できる。最小撮影可能瞳孔径は2mmである。Optos® 200Txの原理、実際の症例を供覧しその特徴を解説する。
展示機器のご紹介
中央産業貿易
200TxTM
興和株式会社
コーワ nonmydTM WX など
株式会社日本ルミナス
RetCam® Ⅲ
有限会社メイヨー
誘発反応記録装置ピュレック(PuREC)
日本アルコン株式会社
Constellation® vision system
アルコンエクスプレス™
緑内障フィルトレーションデバイス