12回眼科臨床機器研究会


日時:20111112日(土)  15:3018:30

会場:横浜シンポジア


ジョイント開催:The 15th IRSJ2011

日眼専門医事業認定番号:12745


主催 眼科臨床機器研究会

共催 日本眼科医療機器協会

会長 庄司 信行(北里大)


プログラム


1)前眼部OCTの魅力                   モデレーター/森田 哲也(北里大)

・新開発の前眼部OCTを用いた調節性変化の計測

                                                        後藤 敦司(キヤノン株式会社)

・前眼部OCTと角膜             裕一(東邦大学医療センター佐倉病院)

前眼部OCTの緑内障への応用:隅角解析の進歩

                                                              三嶋 弘一(東京逓信病院)


2)一般講演                                  モデレーター/天野 理恵(北里大)

前眼部OCT SS-1000の特徴と解析機能について

                                大野 拓也(株式会社トーメーコーポレーション)

・アコモレフケラトSpeedy-“i”K-modelの紹介

                                                  浜中 憲一(株式会社ライト製作所)

・角膜生体力学特性の影響を受けにくい新しい眼圧計ライカート7CR

                                       高宗 栄次(株式会社コーナン・メディカル)

・新時代のパターンスキャン レーザ光凝固装置 PASCAL

                                                            加藤 憲(株式会社トプコン)

3)新しい硝子体手術機器 コンステレーション®

                                                     モデレーター/市邉 義章(北里大)

・硝子体手術の変遷                                            柳田 智彦(北里大

・コンステレーションとは                 吉田 幸介(日本アルコン株式会社)

・コンステレーションの使用経験                 井上 真(杏林アイセンター


1)前眼部OCTの魅力

モデレーター/森田 哲也(北里大)

OCTは眼底疾患の診断において非常に有用であり、現在日常臨床に広く用いられています。一方、前眼部疾患においては組織深達度と測定範囲の問題のため、前眼部OCTの開発が遅れていました。しかし近年、これらの問題点を克服したOCTが開発され、臨床応用されております。前眼部OCTは、眼底用OCTより長波長である1310nmの近赤外光を使用することにより、結膜、角膜、虹彩、隅角、強膜、毛様体の一部を可視化することが可能です。前眼部OCTの組織深達度はUBMには及ばずと言われているものの、高い解像度で各組織の微細構造を抽出します。よって、緑内障術後濾過胞、LASIK後の角膜、調節における虹彩の動き、狭隅角眼における隅角閉塞の状態等々、前眼部OCTでも多種にわたる解析が可能です。このセッションでは3人のスペシャリストにご講演いただき、前眼部OCTの魅力を十分にお伝えできることと思います。


新開発の前眼部OCTを用いた調節性変化の計測

講演者:後藤 敦司(キヤノン株式会社)


2003年 東京理科大学理工学部卒業

2003年 株式会社半導体エネルギー研究所入社

2005年 キヤノン株式会社入社

2011年 北里大学医学部眼科学教室 特別研修生


1990年前半に実用化された超音波生体顕微鏡(UBM)は従来の細隙灯顕微鏡や隅角鏡検査と比較し角膜混濁下の前眼部観察に優れ虹彩裏面の構造も記録・定量化できるようになるなど優秀な検査機器ではあったが、接触型の検査であり手技の煩雑さや圧迫の影響を回避できないという欠点も指摘されていた。そのような状況で1991年にFujimotoらにより開発されたOCTは、1994年にIzattらにより前眼部に応用され非接触型かつ高解像度、高い再現性をもつ検査機器として注目された。角膜、隅角、強膜を含む生体組織の観察ではこれらの特徴が発揮され、現在では前眼部OCTは眼科診療において重要な役割を果たすようになりつつある。前眼部OCTの有用性が認められる中、北里大学医学部眼科学教室では前眼部OCTのさらなる可能性を探索すべく組織深達度が高い北里式前眼部OCTの開発を進めてきた。今回、新開発の前眼部OCTを用いて前眼部形状をより詳細に定量化し調節性変化を調べたので報告する。


◆ 前眼部OCTと角膜

講演者:堀 裕一(東邦大学医療センター佐倉病院)


1995年 大阪大学医学部卒業

1995年 大阪大学医学部眼科学教室入局

2001年 米国ハーバード大 スケペンス眼研究所 研究員

2004年 大阪大学医学部附属病院眼科 医員

2006年 大阪大学医学部眼科 助手(助教)

2009年 東邦大学医療センター佐倉病院眼科 講師

2011年 東邦大学医療センター佐倉病院眼科 准教授


現在、角膜の分野においては、前眼部OCTの活躍の場が非常に増えている。例えば、角膜疾患における角膜厚や前房内の観察、角膜内皮移植後のグラフトの状態の観察、円錐角膜における角膜前面と後面の評価、角膜ジストロフィにおける混濁の深さの評価など、角膜疾患をより定量的に評価できるようになった。少し前までは、細隙灯顕微鏡で角膜の観察はできるので、前眼部OCTなんて不要だと思われる向きも多かったが、今ではOCTで角膜を当たり前のように観察する時代になってきている。前眼部OCTには、前眼部専用OCTと、眼底OCTに前眼部アタッチメント(モジュール)を取り付けることで前眼部OCTとしての観察ができるものの2種類があり、両者に特徴がある。講演では、角膜疾患の診療において、前眼部専用OCTでできる素晴らしい点と、眼底OCTの前眼部モジュールでも、ここまでできるという点についてご紹介したいと考える。


◆ 前眼部OCTの緑内障への応用:隅角解析の進歩

講演者:三嶋 弘一(東京逓信病院)


2000年 広島大学医学部医学科卒業

2006年 東京大学大学院医学系研究科卒業

2006年 東京大学医学部眼科 助教

2010年 東京逓信病院 眼科医員


原発閉塞隅角症(PAC)、および原発閉塞隅角緑内障(PACG)をふくむ狭隅角眼の診断において、前眼部画像解析は重要な役割を果たしてきた。1990年代初頭に開発された超音波生体顕微鏡(UBM)は、前眼部断層像の解析を可能とし、PACPACGにおける隅角閉塞メカニズムの理解を進めた。近年、臨床応用された前眼部OCTでは非接触での検査が可能であり、UBMに比較してより高速に、高解像の組織断層像が得られる。特にフーリエドメインOCTの一つであるスウェプトソース方式前眼部OCTでは、それまでのタイムドメイン方式前眼部OCTに比較し、さらに高速かつ高解像での画像取得が可能となり、1回の測定において最大128枚のB-scan画像取得が可能であるため、隅角の網羅的な解析、また3次元再構成による前眼部構造観察が可能となった。隅角解析における前眼部OCTの利点、欠点を中心に解説したい。


2)一般講演

モデレーター/天野 理恵(北里大)


◆ 前眼部OCT SS-1000の特徴と解析機能について

講演者:大野 拓也株式会社トーメーコーポレーション


 弊社にてフーリエドメイン方式を用いた前眼部OCT SS-1000 CASIAが発売され、はや3年が経過しようとしております。前眼部OCTでは組織深達度に優れた1,310nmといった長波長の光源を用いることで、角膜や虹彩・水晶体はもちろんのこと超音波生体顕微鏡(UBM)でなければ明瞭に撮影できなかった隅角などの前眼部の断層像を非接触で取得することが可能です。

 本装置ではタッチパネルを用いた簡便な操作や、1秒間に30,000A-Scanという高速なスキャンのため1度の撮影で256枚までの前眼部の断層像を取得することが可能となっております。また、取得した前眼部の断層像より隅角の開大度や前房深度などの計測に加え、角膜形状解析により角膜の曲率半径や角膜厚みをトポグラファーのようなカラーマップで表示することもできます。

講演では本装置のより詳細な内容を紹介します。


◆ アコモレフケラトSpeedy-“i” K-modelの紹介

講演者:浜中 憲一(株式会社ライト製作所)


近年のPC,携帯電話を含む情報端末の普及と近方作業による眼を酷使する環境が増加したことにより、眼精疲労や調節障害を訴える例が多くなっております。

アコモレフケラトの機能の一つである調節微動測定は、調節刺激を与えた際のレフ値から周波数解析を行い、高周波成分(1,0~2.3Hz)を積分し、高周波成分出現頻度HFC(High Frequency components)を算出することによって、毛様体筋の活動状態を把握し、調節障害をとらえることが可能です。

弊社Speedy-K Ver.MF-1に比較し、測定時間の短縮による患者負担の軽減やPC不要でのグラフ表示等の工夫がなされており、スクリーニングベースでの使用が可能です。

本研究会にて、他覚屈折検査及び調節検査を可能にした本装置の特徴について紹介させて頂きます。


◆ 角膜生体力学特性の影響を受けにくい新しい眼圧計ライカート7CR

講演者:高宗 栄次(株式会社コーナン・メディカル)


近年、ゴールドマン圧平式眼圧計の測定値が角膜生体力学特性の影響を受けることが報告されています。また、角膜厚のみに基づく測定値の補正は必ずしも十分ではありません。

ライカート7CRは、角膜の内向き・外向き双方向の圧平状態に基づき角膜生体力学特性を定量化することにより、角膜の生体力学特性の影響を受けにくい眼圧IOPcc(Corneal Compensated IOP)を提供します。また、ゴールドマン圧平式眼圧計と相関する眼圧IOPg(Goldman Correlated IOP)も同時計測され、両者を比較することにより客観的な眼圧の把握が可能です。

測定の信頼性は、測定時のシグナル曲線を内部分析したWaveformスコアで表示され、同一眼を複数回測定した場合には、単なる平均値ではなく、Waveformスコアに従った信頼性の高い眼圧を提供します。今回は、この新しい概念の眼圧計の特長について詳しく紹介します。


◆ 新時代のパターンスキャン レーザ光凝固装置 PASCAL

講演者:加藤 憲(株式会社トプコンメディカルジャパン)


 従来レーザによる光凝固治療は、患者さんにとって疼痛を伴い、まだ施術者にとっても、時間と負担の掛かる治療であった。

PASCALレーザ光凝固装置は、スタンフォード大学で開発された、新開発の独自の技術である、『Precision Spot Focusing System』を搭載、従来のレーザ光凝固治療の問題点の改善を目指したものである。

従来の約10分の1という、短い照射パルスと、高出力の組み合わせにより、組織に対する熱障害を大幅に減少させ、患者さんに与える疼痛を軽減、その上で、従来の方法と同様の凝固効果が実現されている。

レーザの仕組み上避けられない、出力の瞬間に生じるエネルギーのムラを高速ガルバノミラーテクノロジーが解決。レーザは常に出力された状態を保持し、一つのスポットの凝固の後、瞬時に次のスポット位置にミラーの角度を変更することで、エネルギーのムラのない均一なパターン光凝固が行えるようになった。

短時間に多くのスポットを照射できることでの治療時間の短縮と、均一なスポットとショートパルスによる、痛みの軽減を目指した装置である。


3)新しい硝子体手術機器コンステレーション🄬


モデレーター/市邉 義章(北里大)

今回は「新しい硝子体手術用機器」と題しまして[Constellation®]を紹介させていただきます。ひと昔の硝子体手術というと、全身麻酔下で執刀医と二人の助手が顕微鏡をのぞきながら手術をし、その周りで看護師や医療機器技師の方々が多くの機器の準備や交換をしながら約3時間かけて終了する、というまさに「チーム医療」の現場でした。しかし、機器が多い、人員が多いが故に予期せぬ事態がおこることもありました。近年、眼科関連医療機器の発展は目覚ましく、手術時間は短く、より正確に、より安全に手術ができるようになり手術の適応範囲も広がってきました。本セッションではまず北里大の柳田智彦先生に硝子体手術の変遷を、日本アルコン株式会社の吉田幸介さんに本機器の特徴を、そして最後に杏林大の井上真先生に臨床現場での応用についてお話をいただきます。手術をなさる先生も、なさらない先生も、また医療スタッフの方々にも「今現在の硝子体手術」について学んでいただければと思います。


◆ 硝子体手術の変遷

講演者柳田 智彦(北里大


1996年 北里大学医学部卒業

1997年 北里大学病院眼科

2008年 北里大学医学部 診療講師


硝子体手術は1970年、Machemerによって始められた。1つのポートから、灌流と吸引が一緒になった17ゲージ(1.5 mm)のカッターを用い、助手がシリンジで吸引しながら手術を行っていた。創口は大きく、カットレートは遅く、それに伴う合併症が多かった。1972年に O’Malley 20ゲージ (0.89mm)で灌流、カッター、照明に分かれた3ポートシステムを開発し、現在の主流となっている。その後、VGFI (vented gas forced infusion)により灌流量の安定化が図られ、カットレートは1分間に800から2500カットへと向上し、2325ゲージの小切開のシステムが導入された。それらにより合併症の頻度が低減され、機器の進化が手術の安全性と効率化を実現している。新たな機器であるコンステレーション®の理解を深めるために硝子体手術の現在までの流れを伝えたい。


◆ コンステレーションとは

講演者:吉田 幸介(日本アルコン株式会社)


1998  日本アルコン入社 サージカル器械営業担当

2008  同社 サージカルマーケティング部

             網膜硝子体機器プロダクトマネージャー


コンステレーション®ビジョンシステム(米国アルコン社:以下コンステレーション)は、2008年秋に米国で発売開始して以来、多くの硝子体術者に選ばれ使用されております。コンステレーションのキーメッセージ「One Giant Leap」は、アポロ11号の月面着陸時にアームストロング船長の残したセリフである「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である (That’s one small step for a man, one giant leap for mankind)」にあやかったものです。コンステレーションが硝子体手術に「偉大なる飛躍(One Giant Leap)」をもたらす器械として、日本の硝子体手術をより発展させる助力となれば幸いです。この度は、2011年に本邦でも使用可能になったコンステレーションの持つ代表的な機能を紹介させて頂きます。


◆ コンステレーションの使用経験

講演者:井上 真(杏林アイセンター


1989  慶應義塾大学医学部眼科教室入局

1994  杏林大学医学部眼科に国内留学(Clinical fellow)

1995  慶應義塾大学医学部眼科学 助手

1997  米国デューク大学アイセンターに留学

             (Research fellow)

2003  慶應義塾大学医学部眼科学 専任講師

2007  杏林大学医学部眼科学 准教授


 コンステレーションは最新の硝子体手術装置であり、それを使用した手術経験を述べる。最高速である硝子体カッターの毎分5000カットやDuty cycleのコントロールが可能である。そのため術中の網膜の動揺を減少させ硝子体切除や増殖膜処理などを安全にかつ効率よくできるようになった。硝子体カッターの開口部と先端までの距離が短縮されたため、従来では剪刀を用いていた増殖膜処理が硝子体カッターのみで多くの場合行える。カセットパックの背面に灌流量を測定するセンサーがあり、吸引量と併せて灌流量が厳密にコントロールされている。硝子体切除を行っている際に、能動的に灌流量を増加させて眼圧を一定にするように制御している。コンステレーションではバックフラッシュの機構を進化させ、あらかじめカセットパックの中に吸引された灌流液を能動的に逆流させることができ、網膜前出血を洗い流すような新しい術式も考案されている。


展示機器のご紹介


エイエムオー・ジャパン株式会社


iFSフェムト セカンドレーザー



ウェイブスキャン ウェイブフロントシステム



中央産業貿易株式会社


    フーリエドメインOCT iVue-100



株式会社JFCセールスプラン


アコモレフ Speedy-"i"



日本アルコン株式会社


Constellation vision system


株式会社コーナン・メディカル


ライカート7CR


株式会社トプコンメディカルジャパン


PASCAL / SLIM LINE

 

▲ページトップへ

Powered by Flips

第12回眼科臨床機器研究会(2011年11月12 日)

編 集